Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


「経営の腑」第434号<通算749号>(2025年10月24日)

 「勝ち馬」つくるサポーター 〜共に歩む気概が肝要〜
  出典:岩手日報「いわての風」寄稿記事(第33回目 2016年1月24日)

 本欄で繰り返し述べているように、事業会社の使命は「お客さまの要求を満たすこと」にあります。その事業活動を通じて、多くの付加価値(利益の源)を生み出し、雇用や納税により社会貢献します。
 そのため、事業会社には、存続の条件(決して「目的」ではありません)として利益の確保、いいかえると経済的成果が求められます。すなわち「業績を良くして事業を続ける」ために自ら「勝ち馬」になることが事業会社の使命なのです。
 一方、世の中にはこうした事業会社とは別の役回りもあります。たとえば産業支援機関や金融機関・専門士業などのように、事業会社を支える立場で、自ら「勝ち馬になる」のではなく、「勝ち馬をつくる」という仕事です。
 舞台でいうところの、役者(主人公)と裏方(黒子)の関係といえるでしょう。
 そこで、自ら勝ち馬を目指す前者を「プレーヤー」、それを支える後者を「サポーター」と呼ぶことにします。
 プレーヤーの使命はすでに述べましたので、サポーターの役割を確認します。それは、プレーヤーを支え事業活動に間接的に貢献することになります。したがって、経済性だけでは語れません。
 サポーターは、「自らが勝ち馬になればいい」という明確な目的があるプレーヤーとは違い、使命感や自己抑制力が極めて大事です。
 その役割は「勝ち馬に『乗る』のではなく、勝ち馬を『つくる』ことにある」という「黒子の矜持(きょうじ)」のようなものが必要でしょう。
 たとえば、事業経営では必ず資金が必要な場面がありますので、主な資金調達先となる金融機関は、プレーヤーにとってはとても重要なサポーターです。従って、将来性の見込まれるプレーヤーが勝ち馬になれるよう、資金面からしっかり支える役割が金融関係サポーターには期待されます。
 かつては、文字通りメーンバンク(主力金融機関)として取引企業を盛り立てるという心意気が感じられましたが、今や「晴れの日に傘を貸して、雨の日に取り上げる」という皮肉混じりの常とう句に象徴されるように、この辺りがかなり怪しくなっている金融機関も見受けられます。
 このようにプレーヤーが好調な時に寄ってきて、調子が悪くなれば潮が引くようにいなくなるという、いわば「勝ち馬に乗る」ことへの執着は近年の悪しき風潮のようです。
 従って、プレーヤーが協力者や関係者を選ぶ際は、濡(ぬ)れ手で粟(あわ)のように「乗る」タイプではなく、自ら汗して共に「つくる」気概のある本物のサポーターとお付き合いすることが肝要です。
 地域の有力企業が債務超過(借金が増えて自己資本がマイナスになること)に陥りました。そこでメーンバンクは、金融庁の指導よろしく、事業再生計画書を要求し、有名コンサル会社を紹介しました。コンサル費用の数百万円は企業負担で、しかもその後の業績ははかばかしくありません。これは、いわば金融機関としてのアリバイ工作で、しかも。その費用を苦しんでいる企業に負担させるという図式です。
 借入金返済もままならない企業に、さらに経費負担が重くのしかかります。「勝ち馬」ならまだしも「負け馬」からも搾り取る構えです。身から出たさびとはいえ、経営者としては傷口に塩をすり込まれる思いでしょう。
 混迷するプレーヤーが似非(えせ)サポーターに足元をすくわれる同様のケースは金融に限らず、有名無実のコンサル会社や独り善がりの専門士業、節操のない補助金制度を押しつけられる行政現場などにも多見されます。こうした事案を見るたび、柳生家の家訓「小才は、縁に出会って縁に気づかず/中才は、縁に気づいて縁を生かさず/大才は、袖すれ合うた縁をも活かす」を思い出します。
 主役たるプレーヤー諸兄には「本物に気づかず、偽物に振り回される愚を犯すなかれ」という教訓をかみしめてもらいたいと、つくづく思うのです。

出典:岩手日報「いわての風」(2016年1月24日)寄稿記事へのリンク

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