Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


「経営の腑」第430号<通算745号>(2025年8月29日)

アマノジャクのすすめ 〜常識覆す視点の経営〜
  出典:岩手日報「いわての風」寄稿記事(第29回目 2014年10月26日)

 お隣の秋田県出身で都内で活躍する夏井睦医師の著書「炭水化物が人類を滅ぼす」を半年前に読んだ。
 直後にその夏井医師がテレビのバラエティー番組に出演され、タレントたちにボコポコにけなされていた。
 いわく「糖質ダイエットした知人が体調不良になった」「生きる楽しみを捨てるようなもの」「パワーが出ない」など、きわめて真っ当な批判ばかりだった。
 一方、夏井医師は、主に狩猟によって食糧を得ていた縄文時代にさかのぼり、「もともと人類が摂取していなかった炭水化物が、その糖質のおいしさと習慣性により、人類にどんどん普及し、ついに主食という座に収まった」と説明する。
 「炭水化物は、主食ではなく、嗜好品ととらえれば良い」という主張だ。タレントたちと夏井医師、どちらの言い分ももっともだが、運動不足で腹囲が気になる私にとって、もっばらの興味は「薬や運動なしで、減量できるかも?」というものだった。
 ものは試しと、夏井医師の提唱する方法を実行したところ、健康を害することもなく、ずいぶん体が軽くなり、肩こりも気にならなくなった。
 こうして、世閻の常識で否定されるような説でも、なかには人さま(少なくても私)の役に立つことがあることを再認識した。まさに常識を疑うアマノジャクの効用だ。
 似たようなことが、事業経営の世界にもあり、「常識を疑い、自ら確かめよ!」という経営者への戒めに通じる。
 たとえば、ちまたの産学官連携には、「開発資金がままならない中小企業に税金を投入し、学術的にも応援しましょう。その結果、世の中に役立つ製品ができ、会社の利益増大につながり、雇用や税収が増えれば、万々歳」という「常識」がある。
 だが、本当だろうか?いつも本欄で述べているように、この多くには事業経営の対象である「お客さま」視点の欠落という根本的問題が潜んでいる。
 だから、補助金を出す「官」、地域貢献という大義を掲げる「学」、資金が潤沢でない「産」という内輪の空騒ぎに終わり、肝心の成果は生まれにくい。さらに、補助金という(糖質のごとき)甘い蜜を一度吸った「産」は、中毒患者のように、お上の補助金獲得に走り回る。肝心の「お客さま」が忘れられた空虚な産学官連携が、「気鋭の経営者の廃人化」の片棒を担ぐという愚をおかす。
 こうした現状を見るにつけ、「筋金入リのアマノジャク?」だった一倉定氏を思い起こす。
 氏は、1970年代に「経営の常識」といわれる事柄を徹底的に究明し、その誤りを指摘し、正しい処し方を社長に説いて回った。当時は「社長の教祖」といわれ、大中小すべての企業経営支援に尽力した。関与した会社は5千社に上るとされ、「一倉プーム」という現象も起きた。
 しかし、氏が弟子をとらなかったことや、指導内容が即効性に富み、かつ広範だったことから、氏から学んだ社長や専門家は、ことごとくその部分的な活用にとどまった。その結果、時とともに自然とその教えも下火となっていった。
 それから40年を経た今、俗説や風説の「常識」で経営現場は混乱の極みだ。私はこれを看過できないとの思いから、一倉定“社長学”をベースとした、実践に資する経営書を今回まとめた。
 心ある経営者に気軽に手に取って熟読してもらいたいと考え、一倉定全集総ページ数4589ページの内容を拙著では100ページ程度まで強引に凝縮した。
 11月下旬の出版予定だが、これが私のライフワークとする「真面目に働いた人が報われる仕組み作り」推進の一助になれば、夏井医師や一倉氏同様、アマノジャクの一人として本望である。

出典:岩手日報「いわての風」(2014年10月26日)寄稿記事へのリンク

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