Sekiyan's Notebook グローカルニュース〜経営の腑

セキやん通信「経営の腑」


「経営の腑」第438号<通算753号>(2025年12月19日)

 「まぐれ」から「必然」の経営へ 〜本質実践に立ち返る〜
  出典:岩手日報「いわての風」寄稿記事(第37回目 2017年4月9日)

 宝くじ歴40年以上の私ですが、安定的に1割配当で9割を上納しています。「どうせ当たらないのに」と身内はあきれ顔ですが、もとより聖人君子ではなく、それなりに我欲もありますので「夢見る楽しみ」と自己弁護しながら地味に続けています。
 ところで、事業経営では、こうした「当たりくじ探し」はお薦めできません。経営者の腕によって関係者の人生の浮沈が掛かっているわけですから、経営トップには、まぐれ当たりではなく必然の経営が求められます。
 しかしながら、古き良き時代の「成り行き」感覚のままの経営者や関係者が多いのが実態です。
 たとえば、某県郡部の名門企業X社のケースです。かつては隆盛を極め、今でもパート含め100人以上の地場有力企業ですが、赤字経営が続き、債務超過でメインバンクの管理下にあります。
 ある日、メインバンクから「監督当局通達で、このままでは資金の融通は難しい。よって有名コンサルY社を紹介するので、再建計画など指導を受けるように」との通告(半ば脅し?)です。
 当然X社はわらにもすがる思いでY社と契約しました。メインバンクは口利きだけですから、年間500万円にも上るコンサル料は、債務超過のX社が身を切る思いで支払ったことは想像に難くありません。
 それでも、その指導よろしく業績改善されれば救いはありますが、多くの会社同様、単に問題の先送り状態が続いているようです。Y社では東北支店のトップ自らが担当しましたが、先行事例頼りの典型的な手法紹介型で、はなから再生指導など期待できなかったのです。
 こうした例は少なくありませんが、ここでは2点指摘したいと思います。
 一つは、「監督官庁+金融機関(一般的サポート機関の場合もある)+へぼコンサル」の、「鉄のトライアングル」ならぬ「ぬれ手にあわ三角形」の存在です。
 この世に2種類のタイプがあるという論法でいうと「(価値を)生み出す人」と「(価値に)たかる人」で、この三角形構成メンバーは「たかる人」です。本来「生み出す人」のサポート役であるべき関係者が、悪気ない「たかる人」だったり、やらずぶったくりの三角形構成メンバーとして意図的に「たかる人」になったりするのです。
 念のために、どちらのタイプかは、「立場」ではなく「姿勢」によって決まることを付け加えておきます。
 つまり、自ら陣頭指揮で高収益構造を「生み出す」社長もいれば、手抜きばかりの「たかる」社員もおり、付き合う相手選びは、くれぐれも注意が必要です。
 二つ目の指摘は、X社やY社の経営に対する姿勢・向き合い方の問題です。
 経営が思わしくないと、X社のように対応策を求めて右往左往します。その時に頭をもたげるのは、成功?事例をパクることですから、多くの事例・ケースをかき集めて提供するY社的なやり方が受け入れられるわけです。
 これは、うまくはまるとある程度成果が上がるので一概に否定できませんが、あくまでも確率に依存し「たまたま」の域を出ません。環境や条件が変わると、また次を探さなければならないので、しょせん「まぐれ」型経営です。
 その対極の解決法が、本欄で繰り返し提唱している「必然」型経営です。
 必然型の根拠は「本質と事実」ですから、時代や環境が変わっても、普遍的に活用し続けられるのです。
 つまり、事業経営の本質「お客さまの要求を満たすこと」への集中です。お客さまの要求と評価は、顧客訪問と売上高年計で確認し、さらに正しい収益性把握のため、人時生産性指標(S賃率)を活用するだけです。
 そして、高収益の商品やお客様に経営資源を重点配分します。これも原理原則の部類ですが、有限な経営資源を高収益の対象にシフトしていくことでしか、わが社のもうかる仕組みは作れません。
 事業経営は、当たりくじ探しではありません。「たかる人」や雑音に惑わされず、事実と向き合い、シンプルに本質を実践することなのです。

出典:岩手日報「いわての風」(2017年4月9日)寄稿記事へのリンク

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