瓜子姫
 昔話は、元来、大人の娯楽でした。

ストーリーは、子供の為になるように、子供の状況に応じて即興でアレンジするものです。

やはり普通は、現在のオーソドックスな童話を参考にする方が無難でしょう。
 昔々、お爺さんとお婆さんが山の中の一軒家に二人で住んでいました。

ある日、お婆さんが川で洗濯をしていると、川上から瓜が流れてきました。

お婆さんは、お爺さんと食べようと思い、拾い上げて家に持ち帰りました。

お婆さんが、包丁を手にしました。

すると、瓜は切る前にひとりでに割れて、中には、可愛らしい赤ちゃんがいました。

お爺さんとお婆さんは驚きましたが、瓜子と名付けて、たいそう可愛がりました。

瓜子は健やかに育ち、美しい娘に成長しました。

機織もとても上手で、機織の音をリズミカルに

”キーッ トントン バッ トントン”

と音をさせて毎日一生懸命働いていました。

織ったものは見事な出来栄えで、町に持ってゆくと高く売れました。

お爺さんとお婆さんは、瓜子を可愛がるあまり、なるべく家から出さないようになっていました。

それでも、美しい織物を織る瓜子の評判は町中に広まりました。

その噂は御殿にも届き、殿様も瓜子を嫁に欲しいと言ってきました。

お爺さんとお婆さんも大喜びして、すぐに、瓜子の嫁入り衣装を町に買いに行くことにしました。

しかし、少し、気懸かりなこともあったので注意しました。

「瓜子よ、最近、天邪鬼という妖怪が出るらしい。私たちが留守の間、誰も家の中に入れてはいけないよ。」

瓜子はうなずきました。

お爺さんとお婆さんが出かけた後、瓜子はいつものように機織をしていました。

そのうち一人でいるのが寂しくなりました。

そこへ、”ピタピタ”と不気味な足音が近づいてきました。

そして、戸口から、悲しげな声で

「瓜子姫、ここを開けてくれないかな。」

「お爺さんとお婆さんに注意されているから開けることはできないのよ。」

「私も一人で寂しいんだ。指1本分でもいいから開けてよ。」

瓜子は可哀想に思って戸を少し開けました。

すると、その隙間に手を掛けられて戸が全て開いてしまいました。

驚いている瓜子に向かって、天邪鬼は

「谷に桃がなっているから取りに行こう。」

と誘い、瓜子は断りきれず行くことにしました。

天邪鬼は瓜子を背負うと、ものすごい速さで谷に向かいました。

着くやいなや瓜子を降ろし、一人で木に登り桃を食べ始めました。

天邪鬼があまりにおいしそうに桃を頬張っているのを見て、瓜子も食べたくなりました。

「自分ばかり食べていないで、私にもちょうだい。」

天邪鬼は、ひとつ、もぎ採って瓜子へほうりました。

それは、まだ熟していませんでした。

「もっと、熟れたのをちょうだい。」

天邪鬼は、また、一つもぎ採り、瓜子へほうりました。

しかし、また、熟していません。

何度、繰り返しても、熟したものはありません。

天邪鬼は

「そんなに不満なら自分で採ればいい。」

と言いながら降りてきました。

「きれいな着物を汚さないように、自分の着ているものと交換して木に登りなさい。」

瓜子は言われるまま着物を交換して木登りを始めました。

低いところの熟れた桃は、既に天邪鬼が全て食べてしまい、高いところにしか残っていませんでした。

しかたなく、瓜子が高いところまで登ると、突然、天邪鬼が木を揺らしました。

瓜子は、真っ逆さまに木から落ちて、動かなくなってしまいました。

天邪鬼は瓜子の顔の皮を剥取り、被りました。

死体は、顔の皮もなく、天邪鬼のぼろの着物によって、もう誰なのか判らなくなっていました。

天邪鬼は、瓜子になりすまして家に行きました。

そして、怪しまれないように機織を始めました。

お爺さんとお婆さんが町から戻り、家の近くまで来た時、機織の音が聞こえてきました。

ギー ド ・ ドン バー ・・・ ドン

いつものリズミカルな音ではありません。

お爺さんとお婆さんは顔を見合わせると家にそっと近づき、中の様子を覗きました。

粗雑な織物を平然と織り続ける瓜子が見えました。

嫌な予感がして、お爺さんとお婆さんは瓜子に跳び付きました。

すると、顔の皮がめくれあがり、天邪鬼だということが判りました。

お爺さんとお婆さんが興奮して問い詰めると天邪鬼が瓜子を殺したことを告げました。

瓜子が死んでしまったことを知ったお爺さんとお婆さんは、もう、我を忘れて、鎌と鍬で天邪鬼を切り刻み蕎麦畑に投げ捨ててしまいました。

蕎麦の根は天邪鬼の血によって今でも赤いのです。
 動物の皮を身近に利用していた頃と現在では受ける印象も違うのでしょう。
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