立山・剱岳

2006.9.2−4


  立山・剱岳 数年前に白馬岳から眺めた立山・剱岳が忘れられず、思い切って出かけました。

 9月2日・立山  参加者:森、吉家、浅沼、阿部
エガッタ



室堂にて

ウサギギク

一ノ越

室堂平
 前日の夜22時、上野駅に集合して急行能登に乗り込む。指定券は取ったものの空席が多いため、喫煙席のある自由席に移る。2日5時41分、寝入った意識のないままに富山駅に到着。電鉄富山駅から車中で朝食を取りながら、立山・室堂へ進む。電車・ケーブルカー・低公害バスと乗り継いで8時半頃室堂に着き、懐かしい風景を眺めながらトイレ休憩や身支度を整える。


真砂岳にて、バック白馬方面
 9時、立山縦走の予定で素晴らしい好天の中を、一の越を目指して歩き出す。整備された歩道の脇で、ウサギギクやヨツバシオガマ、毛が輝くチングルマ等の群落が目を引く。なだらかな登りだが、標高2450mは寝不足か空気が薄いのか、結構息も上がり疲れる。一の越の小屋はすぐ目の前だが、体がなじむまで少し休憩を取り室堂平や大日岳方面の景色を堪能する。照りつける日差しが眩しく、半袖シャツでも寒さもなく微風があたると心地よい。

 岩片をコンクリートで固定した歩道は、ジグザグに曲がり高度は上がり息も上がりそうになると一の越に着く。ここは浄土山と雄山との鞍部だが、結構見晴らしが良く南方の笠ヶ岳から黒部ダム湖上部の山並みが一望できる。更に霞んで八ヶ岳や槍・穂高、その中間に富士山の頭も見えていた。思った以上の大展望に、一同感激しながら息を整える。更なる展望を期待しながら雄山に向け登り出すが、ここからの道は小岩の散らばる乾燥した傾斜で、小石を落とさないよう慎重に高度を稼ぐ。

 空気は乾燥しきって喉がヒッツき、水分補給は欠かせない。7−8歳位の子供さんも難儀している様子。何とか交わすと、間もなく雄山神社が現れ休憩所に着く。山頂の神社は雄山のピークだが、拝観料を払わなければ行けないシステム。早速、余力のある浅沼氏が出向いていったが、我ら3名は目の前に広がる後ろ立山連峰の大絶景を満喫する。土曜の11時過ぎ、混雑するのはこの辺までのようだ。


雄山
 浅沼氏が戻るのを待って、立山最高点の大汝山へ進む。岩場の中を多少の登り下りを繰り返しながら、室道側に続く道を進む。最後に少し登ると、大汝山山頂(3015m)に出る。久しぶりの3000m越え、遮る物は何もなく眼下に360度の絶景が広がる。富山方面は雲海で覆われているが、後ろ立山連峰全体から富士や穂高連峰、白山等々山名と照らし合わせるのも大変。昼飯もそこそこに一同、大展望を満喫する。


一の越よりの展望 霞んで左八ヶ岳、中左南アルプス 右やや左槍・穂高
 40分ほど楽しみ、富士の折立へ進む。ほぼ平坦な室道側に続く道を進むと、間もなくピークを巻き通り過ぎてしまう。真砂岳への大下りが待っていた。先を行く20名ほどのパーティが、蟻のように並んで見える。砂で覆われた山のように岩片は少なくなるが、約150mの高低差は大きい。広く残雪の残る内蔵の助カールや室堂平を見ながらジックリと進む。乾燥した空気は汗をかかすことも少なく、微風も心地よいが喉が渇き水を多いに消耗する。やがて、広くなだらかな真砂岳に出る。


大汝山にて

別山より剱岳

大汝山より黒四ダム
 剱御前小屋へ向かってのフル装備、さすがに運動不足の体に応えてきた。真砂からの再びの大下り、中間に小さなピークはあるものの、別山への登りはきつそうだ。比較的歩きやすい尾根道を浅沼氏に先導されながら後を追う。岩片が大きくなり別山の登りが目の前に現れてきた。別山下のトラバースルート分岐で一息入れて、一気に最後の登りに取り付く。足を突く度に土埃が舞い上がり、靴は真っ白。小石も散らばり疲れた足が不規則に地面をける。それでも以外に早く、山頂に出てしまった。剱沢が大きく口を開き、明日予定の剱岳がドッシリと身を構えている。重厚な岩山、なかなか良い姿で構えている。ジックリと写真に収め、明日のコースを細かく見つめる。

 小屋までは、ほぼ下り道。軽い足取りとは言えないが、精神的には快適に進む。15時22分、剱御前小屋に着く。予約していたはずだが、入っていないと言われ北アルプスの小屋とは全く違う雰囲気に少々戸惑う。何のための連絡か人数変更も届いていない。愚痴っても仕方ないので、すし詰め?めざしを並べたような部屋を出て、屋外ででビールを乾杯、今日の反省会や明日の行程等を暗くなるまで語り合う。

コース時刻:室堂9:00−9:58一の越10:10−11:17雄山11:43−12:00大汝山12:40−12:52富士の折立−13:28真砂岳13:40−14:42別山15:00−15:22剱御前小屋

 9月3日・剱岳


一服剱より剱沢カール

平蔵付近から鹿島槍ヶ岳方面

カニノタテバイ
 3日快晴だが剱御前小屋はご来光は望めず、赤く焼けた剱岳が早く来いと誘う。5時9分、前日に準備して頂いた朝食・昼食をサブザックに詰め替えで出発。小屋からくろゆりのコルまでのトラバースルートは通行止めのため、剱沢へ一旦下る。剱沢は高山植物の宝庫、ヤマソバが咲きそろう中ウサギギクや毛に覆われたチングルマの大群落等々、名前を挙げたらきりがない程咲いている。少し不安定な道を坦々と下り、キャンプサイトで朝食を取る。暗いうちに出かけた登山者の列が岩場に続き、ある程度のルートを確認しながら先を思う。「どうしても登るの・・やんだぐなったら、おらあぁぁやめる・・」と剱経験者の声。トイレを済まして、重い腰を上げる。


剱岳山頂にて

山頂より八峰方面
 大岩の続くゴロー地帯を過ぎると剱山荘だが、今年の大雪で崩壊し新築作業が盛んに行われている。今年の営業は無理のようだ。小屋の裏手を巻いて、いよいよ登りに入る。早池峰山のような登りが続き、30分程で一服剱。前剱の岸壁が本峰を遮り全く見えないが、前日同様の好天で周りの景色はなかなか良い。再び「ここでもどっかぁぁ・・」の声。が、歩き出すと元気がよい。50m程の凹凸を繰り返しながら不安定な岩場を進むと、前剱の急登が待っている。

 岩片の採石道路のような道をザクザク進むと、間もなく急登に入る。早池峰山の急登部よりきついと思われる登りが続く。落石の無いように慎重に高度を稼いでいると、片腕を吊り足首に包帯を巻いた登山者が降りてくる。何処かで滑落したとのこと。痛々しい姿に、緊張が走る。喉をカラカラにしてやっとの思いで、前剱にたどり着く。ヤッパし絶景。剱沢方面は緑と白い山肌とがマッチしてなかなかの風景だ。下る人、登る人も多くなり山頂の混雑が予想される。じっくり休んで「ヤッパ戻る・・」と言いながら、還暦、還暦予備軍は更に進む。

 再び下り切れ込んだ不安定な尾根道を行く。さすがに子供さんは見あたらない。高所恐怖性の方は足がふらつくだろう。鎖場なども多く、上り下りとコースも時々分かれる。平蔵のコルからカニノタテバイに入るが、予想通り渋滞が始まっている。20分ほどの時間待ちとなった。20m程の垂直の岸壁だが、なかなかスリルがありロッククライミングのようで高度感が楽しい。息が上がり出す頃山頂方面も見えだし、気がはやる。難所を交わした安心感からドッと疲れがわき出し、山頂直下で一休み。ヘルメット着用、更に2名でアンザイレンの登山者もいる。混雑する時期は、この姿が一番良いかも知れない。

 なだらかな岩片の続く岩場を10分程登ると、賑わう山頂に出る。荒々しい剱岳の全容が眼下にある。カンカン照りの中、低く雲海が広がり昨日より雲が邪魔をしているようだが360度の大絶景を満喫し、登り切った満足感も手伝い全員感激にむせぶ。下りのアルバイトを案じながら、軽く行動食を取り絶景を楽しむ。2999mの看板を一人一人交代しながら記念撮影をして山頂を後にする。


カニノヨコバイ?
 下りも大変、鎖場、梯子場などが出てきて渋滞。しかしながら、この渋滞のおかげで体が休まり、比較的慎重に行動がとれる。剱登山の特徴のようだ。一服剱に着く頃は全員水も底を突く。別山乗越へのトラバースルートは開通させたようだが、水を求めて剱沢に下る。剱山荘下の雪渓下部で音を立てて流れる水を発見、上部を見れば大腸菌の可能性も無いようなので喉を潤し、遅い昼食を取る。次から次と降りてくる登山者も、この水で乾きを癒していたようだが大丈夫たっただろうか?。

 大休止の後、最後の登りに取り付く。山岳警備隊の詰め所前を通り、重くなった足を交互に運ぶ。登りですれ違った怪我をした登山者は、此処でお世話になっていないだろうか・・と思いながら更に続く登りをヒーヒー言いながら進む。15時20分、剱御前小屋に戻る。早く着いた浅沼氏により、2日目の宿泊手続きも終わり屋外で祝杯を挙げる。渋滞時のパーティも到着して、ガイドに先導され体を解す体操をしている。体操をしているパーティに声をかけると、独特のなまりに反応したのか答えが返ってくる。ガイドさんも体を動かしながら答えてくれる。楽しい宴が続く。

コース時刻:剱御前小屋5:09−5:35剱沢6:21−7:18一服剱7:25−8:20前剱−9:55剱岳10:30−11:51前剱12:12−12:50一服剱12:58−13:35剱沢−15:18剱御前小屋

 9月4日・下山、黒四ダム


地獄谷

ミクリガ池 奥に剱岳
 昨晩より寝苦しい時を過ごし、寝た記憶のないまま体を起こす。3日続きの快晴、5時7分雷鳥坂を下山開始。朝日に輝く大日岳を眺めながら下ると、時々小石に足を取られる。自然のままの道は、小石や岩片が散らばり下山は特に注意が必要。一気に雷鳥沢に降りるが、坂中間頃から立山方面の展望も開けて朝日の逆光に浮かぶ立山連山が雄々しい。約50分ほどで最鞍部の称名川に着き、残り物の食料で朝食タイムとする。

 橋を渡り一登りすると雷鳥平野キャンプ場。ここの分岐を右に進み、地獄谷へ進む。雪解けがやっと終わり春の花も多い中、温泉付きヒュッテの脇になだらかな登りが続く。やがて水蒸気の吹き出す音と共に、噴煙がたなびく地獄谷が現れる。緩い登りとは言え、呼吸は激しくなる。硫黄臭も濃くなり、硫化水素がたなびいていないか心配しながら進むと、転々とガス濃度測定器と合わせた警報装置が付いている。警報は鳴っていないので安心して先に進む。あちらこちらにコンコンとお湯が湧き出ていて、温泉卵を作っている叔父さんも居る。逆光の朝日にたなびく噴煙も画になる。感動しながらミクリガ池への最後の登りに取り付く。


立山ロープウエー

黒部ダムより立山
 ミクリガ池は逆光に輝いていた。立山連山がシルェットとなり湖面に映る。左上には温泉がある。入りたいが、再び汗をかくから・・とあきらめる。小休止の後、最後の室堂平を名残惜しみながらターミナルへ進む。チングルマの大群落、毛が朝日に輝き微風に泳いでいる。素晴らしい光景だ。7時25分、室堂ターミナルに到着。

 お土産・荷物をまとめ、アルペンルートを扇沢へ向けて出発する。荷物が10kgを越えると400円の手回り品切符が必要となる。早朝の出発のため各乗り物はがら空き、回送車両に乗り込んだ感じだ。最初はトロリーバス、トンネルギリギリに走る。次はロープウエー。某国営放送でロープ交換作業が放映された、あのロープウエーだ。これからの景色はまた趣がある。車掌?さんが登山者向けに談笑するように、こまめに景色を説明してくれる。7分間が30分以上も一緒にいた感じで、とても楽しい時間だった。


ダムにて
 各乗り換えポイントには展望台があり、それぞれ趣のある風景がある。運行回数も多いので、お土産等の買い物の時間もゆっくりとれる。時間のある人は、各ポイントをジックリ楽しんだ方がよい。3回目はケーブルカー、最大斜度31度と言うが全てトンネルの中で展望はない。最下部に着き、長いトンネルを抜けるとそこは、黒部第四ダムだった・・。ん十年ぶりの大景観、ダムから吹き出す水が霧となって黒部川に落ちる。虹の先には、かすかに登山道が見える。あそこから登ってきたんだ・・きつかったなぁぁぁ・・と当時を思い出す。

 ダム堰堤を歩きながら思い出にふけり、各自思い思いに記念撮影。時間的に丁度良いのか、団体ツアー客が多くなってきた。混雑を避ける様に、扇沢へのトロリーバスに乗り込む。昭和30年代の建設技術の高さ・困難さを思いながら破砕帯を通過、映画「黒部の太陽」を改めて見てみたい衝動に駆られる。

 扇沢は3度目、懐かしい風景は少し変わっているようだ。野沢菜入りのお焼きをほうばりバスを待つ。ここからは、長野行きの直通バスも出ている様だが、信濃大町・松本経由で新宿に出る。・・みんなぁぁ・・とても良い山旅だったちゃねぇぇぇ・・。 詳しくは後日、ハイビジョン映像をご期待下さい。  阿部 記  写真:森、阿部

コース時刻:剱御前小屋5:07−5:56雷鳥沢6:28−7:03ミクリガ池7:12−7:25室堂

参考:☆富山地方鉄道、電鉄富山駅−立山駅・61分間+待ち時間約15分・1170円荷物代なし。 ☆立山ケーブルカーと立山高原バス、立山−美女平−室堂・待ち時間約20分+7分+待ち時間15分+50分・通し2360円+10kg以上の荷物300円 ☆立山トロリーバス−立山ロープウエー−黒部ケーブルカー−黒部ダム−扇沢、10分+待ち時間約15分+7分+待ち時間約15分+5分+(ダム堰堤徒歩約30分)+16分・通し5700円+10kg以上荷物代400円 ☆剱御前小屋、一泊二食付き・8400円 弁当代一食・1000円(予約を入れたら、2−3日後に再度確認のこと。寝巾、約45cm)