須金岳 (1241m:宮城県大崎市鳴子温泉鬼首)


2008H20).10.12




登山口と案内看板
 家内が連休を利用して岩手に来たため、紅葉見物を兼ねて以前から気になっていた須金岳に登ることにした。ネット上の山の記録などでブナ林が綺麗そうなこと、温泉も豊富、家内が歩ける中級以下のコースで日帰りの山、自分自身も見知らぬ山という条件などから今回の山となった。

 須金岳の登山道は大きく分けて二つのルートがあり、一つは仙北沢から入る大森コース、もう一つは今回歩いた寒湯沢から入る寒湯コースがある。寒湯コースは上ノ台から寒湯沢の手前の林道を800mほど入ったところに登山口がある。しかし林道は悪路であり、車高の高い4駆でなければ通行できない沢を横切るため、我が車はその沢を渡れず、フロント部が沢の石にぶつかって前進できなくなり、やむなくバックで引き返して一台だけ駐車できるスペースを見つけて、そこに駐車して山の仕度をした。


ブナの紅葉

ドウダンツツジの紅葉

タムシバの種子
 須金岳(1253m)はいずれのルートからも真の山頂へ登るルートは無く、登る人たちの感ずるままに山頂と思ったところを山頂と納得するのが良いと思われる。しかし1191.5mの三等三角点(点名:須金)に「須金岳仮の山頂」の標識があるようなので、ここを山頂とみなしても良いかもしれないが、山頂稜線上の最高地点(1241m)付近を通過すれば、山頂到着と見なせると思う。


荒雄岳を見る
 さて山の仕度を整えて登山開始するが、最初の難関は車で渡りそびれた沢の横断である。沢は結構増水していて飛び石伝いに歩こうにも、石が冠水していて簡単に渡れない。バランスの悪い家内の手をとり、何とか二つ沢をクリアする。そしてやっと登山口に到着だ。登山口には須金岳登山道案内図が設置されていて、山の支度中に通り過ぎたバイクが一台だけ置かれていた。いつも一人だけの登山者で寂しい思いをしているが、今日は登山者が合計3名になって随分心強い。

 さて何とか登山口に辿り着き、指導標に沿って登山道に分け入る。のっけから急斜面で閉口するが、とにかくしっかりした登山道が上に延びている。杉、樅、クロベの針葉樹、ブナ、ミズナラなどの広葉樹が混成する気持ちの良い急坂をゆっくりした足取りで登っていく。針葉樹の多い林の中は陽の光も射さず、薄暗い中に木洩れ日だけが際立って明るくスポットを浴びたように輝いて見える。

 登山道は良く刈り込まれていて非常に歩きやすく、林道も登山道並みに整備してくれていたら有難かったなと贅沢な苦情をつぶやいている。樹木の紅葉にはまだ早いが、中には既に紅葉の真っ盛りを迎えた木もあって、目を楽しませてくれる。葉っぱは逆光で透かすと葉脈まで浮き上がって幻想的に見えるが、それをカメラに収めてみるが、なかなか思ったような写真にはならない。

 クロベからいつの間にかブナの森に移っていく様子は先週の山でも同じようであったが、ここでも巨樹を眺めながら急坂を登っていくうちにいつの間にかブナが支配的になっていた。カエデは真っ赤に色づくと派手で華やかだが、山吹色に染まってもそれなりに魅惑的で、美人は何を纏っても綺麗であるようにカエデもまた秋の林床の主役だ。そしてブナは頭上高くで黄色と茶色の微妙なブレンドに染めて輝いている。


九合目 仮の山頂
 五合目を過ぎると少し尾根を下る感じになり、傾斜もやっと一段落の状態になる。何処までも続くブナの巨木の足元には赤い実が所々で落ちている。その周辺を仰ぎ見るとその実がナナカマドだったり、ガマズミだったりだが、秋山を満喫しながらの山登りに幸福感が満ち溢れてくる。それらが全て汗になって全身から滴り落ちる。爽快な汗をかくというのは、まさにこの状態を指すのだと思う。

 八合目でやっと視界が開けて須金岳本峰に続く尾根が見えるようになる。また栗駒山も見えるようになった。よく見ると栗駒山と秣岳をつなぐ稜線から少し下がったところに大きく崩落しているところが見える。地図上では熊沢の上部が大崩落して土石が流れ落ちたように見えるが、これが湯浜温泉大崩落の痕跡なのだろうか。とにかく遠目で見てもそれと分かり、双眼鏡で見ると荒々しくて痛ましい。

 須金岳の紅葉した斜面と栗駒山の全容をカメラに収めて、樹高も低くなり傾斜も緩くなってきた登りを山頂目指してゆっくり登っていく。九合目に到着、仮の山頂へはまだまだずっと先だが、これまで平均して一合当たり15分のペースで登ってきた。つまり後15分ほどで所謂最高地点に到着するのだろうかと甚だ疑問の残る九合目だ。もちろん真の山頂へ行くルートは見当たらない。ルート最高地点を目指して今までのペース配分で20分ほど歩いてみようと、そのまま西に向かってほぼ水平になった登山道を歩く。

 真っ赤に染まったドウダンツツジが頭上に輝いている。葉っぱの下から逆光でカメラを構える。良い塩梅だ。幾つかの構図で自然の妙を記録にとどめる。下手な鉄砲も数うちゃー当たるってモンだ。一番高そうなこんもりした山の僅か下のところにミズゴケが敷き詰められた小さな湿地に出た。この湿地の先を少し進んだところで、どうやら最高地点の1241mに再接近した模様だ。その先は段々下っていき、虎毛山が小枝の隙間から至近距離に見えてきた。避難小屋もはっきりと見える。何だか尾根通しに歩いて行けそうな距離だ。


山頂近くの湿地にて
 これ以上下ると戻るのが嫌になるからと、家内はもう往路を引き返している。これを潮時にして標識のある仮の山頂まで行くのは止めにして、須金岳最高地点を登ったと決めて引き返すことにした。ミズゴケの湿地で記念撮影して、山頂らしき一帯を彷徨ったことで納得して下山開始。

 八合目が一番眺めが良かったので、遅くなったがそこで昼食を摂ることにした。風が随分冷たくなってきた。ちょっと霞が掛かった栗駒山を眺めながら、冷たい風を避けたところで定番のお握りとスープ、それに普段食べないような付き合わせがついた昼食となった。ひとりで食べる食事とは随分違って、やっぱり一味も二味も違って美味しくいただけた。


間欠泉
 登るときは合目通過が約15分の間隔であったが、下りはおおよそ10分そこそこのピッチで快調に降りてきた。頭上の紅葉は綺麗だが太陽が山の陰に隠れてしまい、発色が今一つの状態になってしまった。登りに気づかなかったオオバクロモジの黄色い葉と黒い実、コブシ(タムシバかもしれない)の赤い実など、春とはまた違った雰囲気を楽しみながら山の余韻を楽しんだ。


八合目から見た栗駒山
(崩落が良くわかる)
 無事に下山し水量の少し減った沢を渡って、駐車してあるところに戻り山を後にする。帰路、家内は初めてという鬼首の名所を少し訪ね歩きし、鳴子温泉で山の汗を流した。お陰で帰宅は遅くなったが、山と温泉、観光までついて充実の一日だった。 沖 記

コースタイム:大東町摺沢6:00==(約110km)==8:30寒湯コース登山口8:50---10:00四合目10:05---10:20五合目---11:30九合目---11:45須金岳・ルート最高地点(1241m)彷徨12:05---12:15九合目---12:30八合目(軽食)12:55---13:25五合目---13:33四合目13:40---14:30寒湯コース登山口14:45==(鬼首温泉・間欠泉等見物、入浴:鳴子温泉早稲田湯@530円)17:30==20:00大東町摺沢