白神岳 青森県西津軽郡深浦町;1231.9m


H18.5.3



黄金崎より白神岳

マテ山からの稜線

山頂への稜線
 前夜(5月2日)、白神岳登山口の近くにある秋田県八森町の小料理屋で、景気付けに飲み屋に入り地元の磯料理を食べた。その時、飲み屋の主人から「今の時期に白神岳登山など遭難しに行くようなものだ」と思い切り脅かされて、若干登行欲に陰りが生じたものの現地状況をみて登山の可否を判断することにした。

 翌5月3日、天候は晴れ。白神岳登山口駐車場に到着すると、50台は駐車可能な広い駐車場に数台の車があり、準備中の登山者から情報収集をする。それによると連休中に入山者がそこそこいて、踏み跡も残っている様子。積雪は最後の水場より上部からとのことで、これなら行けそうだと判断して登山準備をする。

 白神岳登山口にはトイレを併設した避難小屋があり、フローリングの床も広く雨天時の食事利用に役立ちそうだが、宿泊は禁止されている。その避難小屋の左脇に登山道があり、そこから緊張しながら旧登山口まで舗道を歩く。車両進入禁止の舗装路は5分ほどで終わり、そこに数台程度駐車可能な広さの旧登山口がある。いよいよここから本格的な山道に入り、緊張が増大する。前夜、脅かされてなければ、期待に満ちた入山だったはずが、思い切り脅かされたため、随分異なった印象での入山になった。

 海岸から駐車場まで稼いだ標高は僅か180m程度で、そこから標高差で1050mほど登らなければならない。登り始めた林床にはイワウチワ、イワナシ、カタクリ、キクザキイチゲが所々で咲いている。そんな花に緊張感を緩和させてもらいながら登っていくと、二股分岐までコースタイム通りの時間で到着。


山頂にて

向白神岳と右奥岩木山

青池
 安全第一で一般的な「マテ山」ルートを進む。事前情報どおり雪は殆んど無く、小鳥のさえずりに励まされて「最後の水場」まで来る。ここでオニギリを一個頬張り腹持ちを良くする。スタミナ補給を済ましここから始まる残雪の斜面を登りだすが、ルートを示す踏み跡がしっかり残されているので安心して登れる。マテ山に登るルートと方向が違い、冬ルートに踏み跡が残っていることを感じるが、そのまま足跡を拾いながら急斜面を登っていく。

 標高850m付近の稜線に出て、マテ山をショートカットして稜線上に出たこと、時間短縮できたことに安堵感が漂う。これで間違いなく山頂に立てると確信し、また呼吸を整えるべく休憩する。そしてカメラを首から吊るして余裕の体制になり、広くなだらかな稜線を快調に歩く。

 白神山地はブナの森という印象だが、ここはブナの巨木は殆んど無く、背の低いブナとダケカンバの混交林だ。緩やかな尾根筋を地図上で自分の位置を確認しつつ、少しずつ高度を上げていく。木立の隙間から白神岳の主稜線が見えてきて、トイレ棟が白い稜線上に目立つ。

 主稜線へ出るために急斜面を約30分登るが、胸突き八丁と言うほどきつくは無く、順調に高度を稼いでいく。傾斜が緩くなった所で、前夜山頂避難小屋で泊まったと言う4人パーティーと出会う。彼らと分かれてすぐに稜線上に出る。目の前に谷を挟んで白く大きい向白神岳の稜線が立ちはだかり、その奥に岩木山が個性的な姿で孤高を誇っている。素晴らしい眺めに感動し、進むべき稜線上に目をやると白く丸い稜線の先にトイレ棟が見え、その右に山頂のポールが見える。

 広い尾根筋をゆっくり景色を楽しみながら、山頂に近づくのは最高の気分だ。10分間ほどでトイレ棟に到着。ここは風が強いらしく雪は無く地面が露出しているが、その近くにある避難小屋は二階部分から出入りするほどの積雪だ。山頂には一等三角点が設置されており、ベンチがひとつある。

 風が冷たくて喜びも程々に合羽を防寒用に着用し、それから四周の展望を楽しむ。まもなく2名が登って来、急に賑やかになる。白神山地がゲレンデという能代在住の方に主要な山々を教わる。山また山の重畳する、視界に広がる山々はすべて白神山地という広大さに驚かされる。中でも目立つのは二ツ森、藤里駒ケ岳、田代岳である。これらの山々は白神山地の核心部に位置する。また霞んでいるが八甲田山の山々が見える。鳥海山は見えなかったけれど、男鹿半島の海岸線が確認できた。

 日本海は眼下に広がり、その海岸線を北上していくと黒崎の町並みとマテ山の今しがた登った稜線がある。その先に黄金崎が日本海に突き出している。十二湖へ下る稜線と谷を隔てて向白神岳の白い峰。その奥に岩木山が図抜けて高く、やはり目立った存在だ。


中央右台形・二ツ森、左奥・藤里駒ヶ岳
 余談だが山頂にトイレ棟が異様に目立つが、これは最近白神岳が世界遺産に登録されて登山者が増え、雪解け時に山頂一帯がティッシュペーパーで白く汚れてしまうために、その予防のために建設されたとのこと。なんだか寂しい話ではあるが、現実の問題として止むを得ない事と納得させられる。

 山頂からの山岳展望を十分楽しんで、下山に向けて山頂を辞す。下りはやっぱり早い。しかも残雪の山は気ままに走るように降りるため、あっという間に急斜面を下りゆったりした稜線上に到着する。そして簡単に水場に到着する。ここからは夏道になるため、無理して早足で歩くことをやめて、ゆっくり余韻を楽しみながら駐車場へ向かう。

 下山後、折角の白神山地に来たことでもあり、観光気分で十二湖へ向かう。特に青池のインクで染めたような透明な青さに感動を覚える。その後、黄金崎へと向かう。海岸線を手前に白神岳の白い峰が美しい。特に今しがた登ってきたという安堵感があり、余計に美しく感じられ山の余韻を楽しみながら眺めていた。  沖 記

コースタイム:摺沢==(約240km)==7:15白神岳登山口7:25---8:00二股分岐8:05---8:30最後の水場8:45---9:20稜線9:25---10:20山頂主稜線---10:30白神岳山頂(1231.88m:昼食)11:30---12:25稜線12:30---14:00白神岳登山口===十二湖(青池)===黄金崎