宮城の低山


H22.5.22

        大土ヶ森 (標高:579.71m、宮城県栗原市)   参加者:沖

コースタイム: イワカガミ平11:45==(約35Km) ==12:35大土ヶ森鶯沢駐車場12:45---13:00子生婦(こんぶ)岩13:02---13:04分岐---13:18観察広場13:20---13:55大土ヶ森(579.71m)14:05---14:13大兎(おおど)岩---14:40駐車場14:45==(約60Km)==16:05摺沢


登山口
 山と渓谷社発行の「宮城県の山」に山野草、紅葉、山頂の展望と魅力のそろった里山として大土ヶ森が紹介されている。山名の由来は溶岩が盛り上がってできた山で大土盛とよばれていたが、いつの間にか大土ヶ森になったと書かれている。ちなみに山頂にある二等三角点の点名が「烏兎ヶ森(ウドガモリ)」である。

 栗駒山に登った後、迂回路を経てナビの指示に従い行き先をセットする。登山口までのルートは県道79号線の中山部落から小さな案内板に従って分岐し、約1Km走ると小川に沿って直進するように狭くなった道を西に進む。途中で舗装が途切れ、通過を躊躇するようなトンネルを抜け、左に分岐路を過ぎると登山口まで丁度1Kmとなる。登山口は車が10台程度置けるスペースがあり、案内板があるので見落とすことはない。

 3台駐車している空きスペースに日陰を加味して車を止め、山の支度は登山靴を履く程度で荷物も簡単に入れ替えるだけで完了。杖をもって案内板を見ながら往復約120分のコースタイムから、戻り時間を考えまだ余裕があるなと確認して出発する。


子生婦(こんぶ)岩
 歩き始めて直ぐに中央コースと沢コースの分岐になったため、登りは涼しそうな沢コースを採って進む。小さな沢を何度か右岸、左岸と交わしながら登って行くが、疲れが一気に噴出したようでピッチが上がらない。それでも思ったより早く、子生婦(こんぶ)岩に到着した。面白い造詣にぴったりの名前がつけられていることに感心して、そのような角度からカメラを構える。


チゴユリ
 その直ぐ上で中央コースと合流し、緩傾斜の歩き易い遊歩道のような道を呼吸を整えながら進む。赤松の多い雑木林の林床は、チゴユリが群生している。帰路に写真をとることにして、ここは花に慰めてもらうだけ。少し進むと観察広場の標識、寄り道をして階段を登って行くと東屋とベンチがおかれた広場になっている。正面に大土ヶ森がデンと聳えていて、その山頂部から下に向かって急傾斜の山肌が新緑で何とも言えず美しい。

 一呼吸して再び登りだすと新緑にアクセントを添えるように山つつじが赤い色で丁度見頃と咲いている。そんな景色に慰められながら前進していくと、ほんの少しでまた分岐に到着。今回も中央コースを下山に回していっき坂コースを登る。どっちを選んでも急斜面で、ロープを頼りにしなければ登りきれない。


山頂
 小さい山だけれど延々と続く急坂には参ってしまう。羽虫が汗をかいた額にまとわりつくように目の前を舞い、汗を拭うのも厄介なほどの急斜面とのダブルパンチにすっかり疲れてしまった。やっと急坂を脱し新緑の木陰で呼吸を整えながら東へ進む。淡い緑の下に花季を終えたシラネアオイが登山道脇に幾株が残っていて、それを見過ごしていると、つつじが咲き乱れる開放的な空間がぱっと現れてそこが大土ヶ森の頂だった。

 山頂を示す三本柱を組み合わせた標識が大きく立てられていて、その前に二等三角点(点名:烏兎ヶ森、標高:579.71m)が設置されている。そして北北西が開けていて、その先には栗駒山が優美な姿を見せていた。苦労して登ったご褒美のような景色が待っていてくれた。つつじが山頂一面に咲いていて、山頂からの展望に彩を添えていた。一気に苦労が報われたような感じだ。

 しかし長居はできない。羽虫がまとわりついて離れないからだ。展望広場へ下るのはやめて、早々に山頂を辞して下山に取り掛かる。山頂稜線に咲き終わったシラネアオイをカメラに収めて、中央コースを下る。

栗駒山遠望

 いっき坂と同じように急坂にロープがきつく張られ、そのロープにつかまりながら一気に下る。鼻こすり坂、くま落坂、大兎(おおど)岩などを経て、羽虫が寄り付かない速度で急いで下山する。チゴユリの写真だけは忘れずに撮ったが、レンズの前にも羽虫にまとわりつかれて大変だった。この時期は団扇が必須だと痛感。

 気になる山の標高だが大土ヶ森の標高は一般的には25000図に示された580.3mだったが、2009年9月に公示された地震に伴う改測後の基準点測量の三角点標高は579.71mとなっている。


泉ヶ岳、青麻山、翁倉山、硯上山大六天(だいろくてん)山、金華山、達居森、御駒山


H22.5.8

        御駒山(標高:522m、宮城県栗原市字本沢    山行者:沖


アヅマシャクナゲ
コースタイム:摺沢1000==(約75Km==1130花山少年自然の家駐車場1145---1215御駒山山頂(522m:軽食)1230---1245分岐---御嶽山アヅマシャクナゲ散策---1340分岐---1400花山少年自然の家駐車場1410==(約75Km==1545摺沢


花山少年自然の家
 山と渓谷社発行の「宮城県の山」に宮城県人の多くが登っている思い出の里山として御駒山が紹介されている。その理由は御駒山の西側山麓にある国立花山少年自然の家が関与している趣旨が記載されている。またこの山はカタクリやイワウチワが咲く山のようで、新緑に彩られた稜線に沿った登山道脇にその残骸や葉っぱが沢山見られた。

 今回この山を目指したのはもう一つ目的があり、それは北限自生地として国の天然記念物にも指定されているアヅマシャクナゲの花がそろそろ見ごろを迎えるからである。どこかの山に登った折に花のきれいな山としてこの御駒山のシャクナゲを教わっていて、いままで忘れずに暖めていたことも今回の動機の一つでもある。


花山ダム
 登山口として一番楽に登れる花山少年自然の家(標高:約310m)を利用するのが手っ取り早く、そこにナビをセットして摺沢を遅くに出発した。花山少年自然の家は2008年6月の栗駒山地震の影響でずっと閉鎖に追い込まれていたが、最近のHPによるとこの5月10日から再開されることになったようだ。再開直前だったこともあり駐車場はガラガラで気兼ねなく駐車できた。広大な敷地に植えられたシャクナゲは満開の状態で、山では日当たりや標高を加味すると微妙な塩梅だなとやや不安を感じながら身支度を整える。気になる登山道は駐車場脇に直ぐに見つけることが出来、これで心配事はシャクナゲだけになった。


山頂の祠
 駐車場脇にある御駒山登山口の標識に従って階段状に付けられたオリエンテーリング兼用の登山道を登っていく。小さな尾根ルートを暫く登ると直登と巻き道とのルート分岐になり、直登ルートは危険と書かれてある。ここは急斜面の直登ルートを一気に登る様に進んだが、これが結構きつくて運動不足の体には厳しい試練になった。でもペースを落として登っているうちに段々調子が出てきて、いつの間にか標高500mあたりまで登っていて花山湖から続く尾根道の登山道と合流し、程なく三等三角点(点名:駒山、標高:519.29m)に到着。最高地点はこの先100mほど北側にあり、そこは標高点522mが25000図に記載されている。まずは山頂到着の儀式として三角点の頭を軽くタッチして、そのまま最高地点を目指す。


大土ヶ森
 最高地点には小さな祠が設置されていて、南側が伐採されて花山ダムがきれいに望むことが出来た。山頂部で軽く軽食を摂って空腹を癒す。東には樹林越しに大土ヶ森が小さいながら端正な三角形の山容で目立っている。誰もいない静かな山頂で和歌山の実家から持ち帰った甘夏をデザートに食すると、柑橘類独特の刺激がのどを満たしてさっぱりした気分になった。


栗駒山遠望
 下山はそのまま北側に向かって御嶽山を目指す。ブナの新緑が快く、その枝先に白い山が大きく見えるのは盟主栗駒山だ。さすがに山肌は白だけでなくなったが、まだまだ雪山の様相を呈している。御嶽山との鞍部に到着すると舗装道路が通じている。右に御嶽山の方向表示に従って舗装路を北側に進んでいくと、駐車スペースはないが天然記念物を示す小さな標識があり、鍵の掛かった柵の下に階段が沢に向かって降りているのを見つけた。多分ここがシャクナゲ群生地に入るところだろうと信じ、人一人通れる隙間から柵を越えて階段を降り、小さな沢を渡って対岸の斜面に取り付いた。

 するとその上部林床にはアヅマシャクナゲの群落が見事に広がっていた。花の時期に僅かに早いかなと言う状況だが、赤く大きな花は見応えがあって素晴らしい。残念ながら花芽が少ないようで林床を赤く染めるような群落を眺める贅沢は得られないが、それでも幾つかの花株には沢山の花を咲かせていて夢中でカメラを構えた。

 大満足で御嶽山を降りて分岐点から舗装路と分かれてスキー滑走ルートを経て、少年自然の家に向かった。少年自然の家周辺は色濃いしだれ桜が満開になっていて、これまた見応えがあった。

達居森 (標高:262.58m、宮城県黒川郡大和町大字吉田、黒川郡大衡村大字大瓜)

 H22.4.16 登山者:沖

コースタイム:牛野ダム下駐車場1140---1205分岐---1215見晴峠---1220達居森山頂(262.58m)1240---1340牛野ダム下駐車場


駐車場

 山と渓谷社発行の「宮城県の山」にも豊かな自然が息づく展望抜群の里山として達居森が紹介されている。またこの山は片栗の咲く山として、そしてヒメギフチョウが生息する山として知られている。ヒメギフチョウはカタクリの咲く頃に羽化するようで、丁度良い季節になったはずと思って帰省途中の寄り道を兼ねて里山の達居森に出かけた。


雑木林が美しい尾根道

 三本木ICにETC専用出口が出来、4号線への接続が容易になったので国道を仙台方向に入ったところでナビをセットして牛野ダムを目指す。何処をどのように走ったのかさっぱり分からないけれど、予定到着時間よりやや早目に目的地に到着。ダム堰堤下の草地を駐車場に開放しているようで、広々とした駐車スペースに平日だというのに数台の車が駐車してある。

 曇り空で風が冷たくまだ春遠からじの様子だが、鼻水をたらしながら着替えをして軽く軽食を摂る。着替えをしているうちに仙台から来たという夫婦連れがやってきて、午前中に岩出山の梅を見て、これから山に登るとのことだ。私がもたもたしているうちに、仙台の夫婦はサッサと支度して先に出かけていった。

 すっかり遅い出発となったが、駐車場を出ると直ぐにダム放水路を渡ると直ぐに達居森登山口になる。案内標識に従って登りだすと直ぐに階段状の登山道が尾根筋に沿って付けられている。出端から階段では運動不足の身体にはきつく、とにかくゆっくりペースを心がける。知らぬ間に新登山道に入ってしまったようだ。

 少し体が馴染んでくるころ、キブシやマンサクが目線上に見えるようになる。そして足元には目指すカタクリの葉っぱがちらほら目立ってくる。するといきなりカタクリロードとなるが、期待したような花が咲いていない。まだほとんどが蕾の状態で開いた花はほとんど見られない。気温も低くてこれではヒメギフチョウが乱舞するには寒すぎるなと早くも諦めムードが漂う。


展望台

 登山道は尾根に沿った気持ちの良い雑木林の中につけてあり、足元にはどんぐりの実が沢山落ちている。分岐に着いて東屋方向への標識とその距離から新登山道を登ったことに気づき、この先は起伏の少ない尾根をたどると達居森山頂に近い。

 見晴らし峠にもベンチが置かれていて、そこからは東側が刈払われて景色を眺めながら休憩する絶好のポイントだ。でももう山頂は近い。写真だけ撮って山頂を目指す。7分ほどで登山道沿いに、休憩スペースもない単に登山道の中にぽつんと標識と三角点それに小さな祠があるだけの達居森山頂に到着。標識を見ると山頂の先に展望台があるとのことで、山頂到着の儀式としていつものように三角点(種別等級:二等三角点、点名:達居森、標高:262.58m)に軽くタッチして、早々に展望台に向かう。


山頂

 山頂から直ぐのところに展望台があり、先に登った仙台の夫婦が昼食の準備中だった。大きな展望案内板が設置されていて、その向こうに七ツ森が指呼の間に見える。その右には七ツ森の兄貴格になる笹倉山が大きい。その中間に南川ダムも良く見える。七ツ森の鞍部の先にガイドブックによると仙台市のビル群が見えると書いているが、撮った写真を良く見るとビル群がしっかりと写っていた。


七ツ森を見る

 展望と雑談を十分に楽しんで、先に下山を開始する。下山は小さな山ゆえ、あちこちの枝道を適当にたどってみては、片栗やヒメギフチョウを捜し求めたが、結果としてヒメギフチョウには出会えなかった。楽しみを後に残して、今回は小さな里山にも色んな楽しみがあることを知って、東北の山の懐の深さを感じさせてもらった。



金華山(445.2m、宮城県石巻市大字鮎川字金華山)

 22.1.24 山行者:沖


船から金華山を望む
 1月24日も早朝から雪が降り、昨日に引き続き連日の雪模様の朝となった。しかし日が射すと一気に溶けてしまうので、昨日のような雪による交通事故を恐れた自粛で山延期の後悔をしないよう山の仕度をして慎重に車を走らせた。大東町から藤沢町を抜けるまで路面に雪が残り慎重な運転を心がけたが、国道346号に入ると雪も消えて快適なドライブとなった。登米ICから高速道に入り石巻河南ICで降りて、石巻バイパスを経てコバルトブルーに輝く三陸の海を見ながら鮎川港まで心地よいドライブを楽しむ。

 鮎川港と金華山を結ぶ定期船は10時から14時まで二社が交互に30分おきに運行していて便利で、所要時間約20分を山登りとはいえ遊覧船を楽しめるおまけもある。鮎川港に到着すると直ぐに次に出向する船の案内があり、乗船する船会社の人から駐車場所に誘導してもらって、乗船券片道分900円を購入して20人乗りのジェット船に乗り込む。乗客の中には登山者が一組みだけいて、結局この年配夫婦と山頂から下船まで同行することになった。

 桟橋を降りて金華山黄金山神社と書かれた石碑、立派な鳥居を潜って、舗装路を緊張の面持ちで少し速めのペースで登っていく。先行する二人のピッチは早くて、離されないように付いて行くのがやっとの状態だ。車道と分かれたところから早速鹿の歓迎を受けて、いかにも金華山と言う印象を受ける。黄金山神社の拝殿で山の無事、旅の安全、健康祈願、家内安全、商売繁盛などをいつものように盛り沢山に祈願して、右脇にある登山道を登っていく。


畏敬の樹木
 沢沿いの道は小さな島にもかかわらずそれなりに水も流れていて、この神社も水を大切に扱っているようだ。登山道脇の針葉樹には大きなカヤの木が多くて感動的だ。また登るに連れて岩だらけの土壌のためか、樹木が率直に大きくなれず異様な形が多い。

 登るに連れて段々と調子が出てきて幹が瘤瘤したブナを過ぎた辺りで、先行していた夫婦に追いついて暫くは話をしながら登っていく。聞くと雪降りしきる秋田市を早朝に出てきたとのことで、雪の無いこの山に驚いていた。金華山の沢コースの登りは風もなく太陽が容赦なく降り注ぎ、陽だまりハイクに最高の状態になってきた。厚着をしていた夫妻が休憩するところで別れて、谷間の景色などカメラに収めながらマイペースで登っていく。


山頂から二の御殿への明るい道
 山中には鹿は居るが、想像していたほど多くはない様で、登山道付近で出会ったのは登りに一度と、下りに一度だけだった。ただ登山道脇には至るところに鹿の糞があって、足場にも気を使うし腰を下ろすにも注意が必要になる。

 ブナの根っこが異様な瘤コブをこしらえて、地中に潜れず表面に特別大きく張り出しているのを見つけた。生存をかけて必死に大地に食らいついているさまに、敬意をもって頑張れよと言いたくなる。

 標高350m辺りだろうか、水神社が二体の地蔵様に守られている地点を通過する。この辺りから谷がぐっと浅くなり、稜線が近くなってきたことを感じさせられる。

 その先少しの登りで稜線の八合目に到着、ここは正面に三陸の海が見え気持ちの良いところだが、風の通り道に当たっているようでブナの枝が歪曲し風が冷たい。一気に汗が引き、鼻水が出てきて困ってしまう。吹きさらしの稜線をペースを落とさず一気に山頂に到着する。所要は丁度桟橋から一時間、標高差約450mを一気に登ったのだから結構きつかった。


山頂にある石のいすとテーブル
 山頂からの展望はコバルトブルーの海と牡鹿半島の白い波打ち際の複雑な海岸線と背の低い山並みが望めるばかりだが、牡鹿半島最高峰の光山が同定できて嬉しかった。この山には登山ルートは無いが、藪を漕いでも30分と掛からないだろうから、そのうちに機会があればついでにでも登ってみようと思う。ただ年末に登った大六天山、硯上山、翁倉山などは同定できなかった。

 一気に登った山頂には海上安全、大漁豊漁の守護神である大海祇神社があり、その左横に二等三角点(点名:金華山、標高:445.22m)が埋設されてあった。ただ山頂にあった標高を記載した標柱には「頂上444.9m」と記載されていて、ちょっと違和感を覚えた。南方向に石のベンチとテーブルがあり、風当たりを避けてその下の南向きの暖かい芝生に鹿の糞に気遣いながら腰を下ろす。


牡鹿半島の山並み
 暫くすると遅れて夫婦がやってきて、帰路のルートを尋ねてきた。自分は二の御殿経由の周遊ルートを歩くことを説明すると、一緒について行くとの返事だ。夫妻が購入していた往復チケットでは13時丁度の船になるため、早々に昼食を済まして陽だまりの中の急傾斜を南に向かう。多少遠回りだが桟橋まで一時間は掛からないだろうと踏んで出発したが、面白い形をした樹木が随所に目を楽しませてくれてカメラの出番が多くなり思ったようには下山が捗らない。おまけに途中の造林小屋を過ぎてからルートミスをして、海岸像の車道に降りるのではなく電線巡視路の踏み跡を辿って山中を等高線に沿うように歩。

 このルートが樹木の奇形をもっと沢山見ることが出来て楽しかったが、船の出港時間ときわどい勝負になってしまった。自分たちの採ったルートは山麓の樹林帯から黄金山神社の境内に至る道で、境内から舗装路を駆け下りて桟橋に戻った。


 辛うじて出港する船に間に合い船上から遠ざかる島を眺めていると、利尻山を小さくしたような海上から山頂に一つの三角形が出来上がっていくのが分かった。火照った体を海風で冷ましながら遠ざかる島や、スクリューの波しぶきを眺めているうちにあっという間に鮎川港に戻ってきた。

 帰路は「石巻しみん市場」に寄り道をして、一人ぐらしの食材を買い求め、藤沢町館ヶ森の日帰り湯(まさぼうの湯:入浴料500円)で山の汗を流した。

コースタイム:大東町摺沢7:30==(約120Km)==10:18鮎川港10:30〜(900円)〜10:50金華山桟橋10:51---11:02金華山黄金山神社11:08---11:38水神社---11:50金華山山頂(445.22m:軽食)12:05---12:17二の御殿---12:58金華山桟橋13:00〜(900円)〜13:20鮎川港13:45==(約120Km)==17:30大東町摺沢


牡鹿半島根本付近の三山架け(記載:上下逆順)

H21.11.28 山行者・文:沖

         翁倉山(標高:532.41m、宮城県石巻市大字女川)

 翁倉山はイヌワシの生息する山であり、マツタケを産する山でもあり、地元から見れば他所者が勝手に入って荒らさないで欲しいと思う山なのだろう。とにかく標識は少ないし登山口もよく分からない上に、登山道も整備されているとは言い難いような山だ。


山道への入り口

 冒頭から苦言みたいなことを書いたが、本来の里山はこの翁倉山のようだった。いつの間にか嗅覚に頼らなくても歩けるような山ばかりになっているなかで、この翁倉山は比較的里山らしい雰囲気が感じられた。まず登山口になる車道から林道への入口が分かり辛い。「新田屋敷」と書かれた標識に沿って右折して細い路地道を入っていくと、谷間の道になり舗装も途切れていつの間にか林道になっている。それより少し奥に走ると、車が数台駐車できる退避場のようなところが登山口となる駐車場だ。先行車は2台。この地点で標高は大凡90m程度だ。


緩やかな尾根道

 歩き出すと直ぐに林道が二俣になっていて、左側に小さい案内板が置かれてある。見落としそうな標識だが、それを過ぎるとこれまた直ぐに大きな山桜の幹に小さな標識がかかり、左の斜面に登るように矢印が示されている。その先は虎ロープで、のっけから急坂の厳しい登山道だ。これをクリアして一旦稜線まで出ると緩やかな登山道に変わる。でも松喰虫で枯れた赤松が登山道を塞ぎ、他にも倒木が行く手を塞ぐようなところが多々あり、またいだり潜ったりと、とにかく疲れる。

 この翁倉山がこの日の3つ目の山で小さいながらも2つ登ってきた後では結構足に疲労がたまっていて、最後にちょっときつい山を残したことに後悔しながら、山の後に追分温泉が待っていると言い聞かせて我慢する。


翁倉山山頂の雰囲気

 標高340m辺りから尾根が急になる頃、稜線から逸れて西側にトラバースするように緩やかに勾配をあげつつ、西から繋がった主尾根に乗り移る。ここまでほぼ一時間の所要だった。息切れしていたがそのまま休憩もせずに一気に登ろうとして、合流地点から先の急勾配を直進すると、登るにつれて傾斜が増し虎ロープが張られている。急勾配を虎ロープの助けを借りつつ我慢して登って緩傾斜になったところで、「マツタケ取るな」の趣旨の看板があった。その先に更に急傾斜が続き虎ロープが張られて居て、さすがにこの急傾斜を越したところで息切れして少し休憩。お茶も美味しいが林檎が何よりおいしい。


山頂にて

 そこから山頂まではほんのわずかな距離だったが、樹木の間から北上川の河口が見え隠れするようになり、気持ちもぐっと楽になった。

 山頂に到着すると登ったと言う感動や安堵感よりも、まず日の丸の旗が飛び込んできてびっくりした。冷静に山頂を見回すと、二等三角点(点名:翁倉山、標高:532.41m)は僅かに頭を出している程度。小さな祠が祀られ、そこには賽銭がぎっしり積まれていて微笑ましく見える。

 まず山頂到着の儀式で三角点を軽くタッチし、沢山の願掛けを呪文のごとく唱える。それから山頂からの景色を楽しむべく四周を見渡してみるが、肝心の北上川が山頂からは殆ど見ることが出来ない。北上川が見えないので南に下がった別ルートに入ってみたが、小枝が邪魔して大河の河口をゆっくり眺められる場所は見出せなかった。とりあえず望遠モードで何とか河口付近の写真を撮り、再び山頂に戻って遅い昼食を楽しむ。


北上川の河口

 北上川の河口付近は登米地方から下流域に葦が茂る自然豊かなところであり、太平洋に注ぐあたりはどんな景色が見られるのか非常に興味があった。今回、翁倉山から大河が海に交わるところを眺めて、意外と水量が少ないなと驚かされた。上流で新旧河川に分水して回される水が少なかったからだろうか、だから翁倉山は雨乞山であったのか。

 一日で3山を登るのは縦走路以外では初めてだが、充実した山歩きを堪能できた。帰路は予定通り追分温泉のさっぱりしたお湯で山の汗を流し、疲れた筋肉を癒した。

コースタイム:硯上山登山口駐車場1105==(約20Km)==1135翁倉山登山口1145---1240主稜線合流点---1310翁倉山(532.41m)1330---1345主稜線合流点---1415翁倉山登山口1425==(約5Km==1435追分温泉(入浴料:300円)1520==(約70Km==1700大東町摺沢


        硯上山(標高:520.17m、宮城県石巻市大字雄勝)

 大六天山から一旦女川に戻り、そのまま風光明媚なリアス海岸を車窓から眺めながら雄勝町に入る。雄勝峠手前右に硯上山登山口の大きな駐車場があり、先行車が一台停めてあった。「ふるさと緑の道」として整備されたものだろうと思われるが、20台は裕に駐車できるスペースがあり金網で囲われている。雄勝町は全国一の生産量を誇る雄勝硯と海の幸が主な物産だが、町で一番高い山に硯を充てたのが硯上山とのこと。


広い遊歩道(入り口付近)

 車止めのゲートをまたいで車道並みに整備された遊歩道をゆっくりペースを意識しながら歩く。山頂まで2.1Km、標高差約170mであり、40分が大凡の目安だ。所々に標識があり、いかにも遊歩道と言う雰囲気だ。途中に水場と荒れて使い物にならない休憩小屋を通過。この場所は谷間にあって地図には登山道が下に通じているはずだが、今は誰も歩かないのか踏み跡らしき痕跡も見出せない。


山頂の三角点と吾妻屋

 山頂手前0.5Km地点で道は二手に分かれるが、時計回りに左側にルートを採った。右側ルートには自然散策路と名付け区別していた。手前0.2Km地点で味噌作部落からの道と合流し、最後の直線道を一気に登りきると、山頂広場に到着した。太陽電池パネルを張り巡らして相当背の高い硯上山のシンボル的存在の電波塔が一基、その奥にこじんまりした東屋が一棟ある。芝生の張られた山頂広場の真ん中ほどに、こんもりと高くなった場所に二等三角点(点名:硯上山、標高:520.17m)がちょこんと白い頭を出していた。


電波塔

 三角点の周りは芝生だけで、標識も三角点を守る石の囲いも無く気の毒なほどだ。その三角点に軽くタッチして恒例の呪文を唱え、大きく広がった展望に見入る。眼下に雄勝湾が綺麗だ。南に霞んでいるが、金華山がピラミダルでスタイリッシュな姿を見せてくれる。先ほど登った大六天山は何処かと探すが、電波塔が一つだけの山は幾つか見出せるが、二つの山は見つけられず同定できなかった。また西方向は視界が開けてアンテナが目印の山が幾つか見えたが、北側方向に見えるはずの肝心の北上川やその後方にある翁倉山は樹林に隠れて見出せなかった。広い山頂だったからもう少し動き回れば視界の開けた場所から、目的の山や川を見つけることが出来たかもしれない。


雄勝を望む

 先行車があったにもかかわらず無人の山頂で「あれっ?」と思っていたが、自然散策路経由で単独行者が登ってきた。向こうも誰も居ないはずの山頂に私が居たことに驚いていた。幾つか話を聞いたところでは地元の人で健康登山を目的とし、山頂直下でゆっくり休憩してきたとのことだ。

 硯上山は山頂部一帯が芝生でツツジが植わっている程度のため、時間があれば茣蓙でも敷いて寝転がっていたいような開放的な山頂だった。しかし今回はちょっと時間の掛かりそうな翁倉山を残しているため、次なる山を目指して自然散策路ルートで下山した。

コースタイム:大六天山駐車場850==(約33Km)==935硯上山登山口駐車場945---1015硯上山(520.17m)1035---1100硯上山登山口駐車場1105==(約20Km)==翁倉山へ
翁倉山に向かう途中の味噌作部落辺りから見る硯上山は、山頂部が平坦で電波塔がやたら目立つ山だった。



      大六天(だいろくてん)  (標高:440.25m、宮城県牡鹿郡女川町大字高白浜)


登山口の展望台駐車場
 かねてから気になっていた北上川河口の南北に対峙する硯上山と翁倉山に登ろうと計画を立て、周辺の地図を見てみると牡鹿半島の付根に一等三角点の山があることに気づいた。調べると大六天山、別名三国山と呼ばれ、簡単に登れることが分かったので一山増やして一日3山を目指すことにした。


三国神社へのルートから見た電波塔
 登山口は金華山コバルトライン沿いの尾根筋にあることを地図で確認して、その座標をナビにインプットして行き先を定めた。驚いたことにその場所は展望台の駐車場になっていて、女川湾の好展望地だった。広々とした駐車場の一角に車を停めて、海を見ながら山の仕度をする。海と山との組み合わせでどうもしっくり来ないが、南三陸の山を登るのだから斯様なコラボは当然のことになるはずだ。それまで気づかない自分がお馬鹿さんと言えよう。またガイドブックなどで下調べをしていれば展望台駐車場に驚くことも無かったろうと、馬鹿もここまで来ると評価にも値しない。


山頂にて
 余談はこれくらいにして本題に入るが、登山口は展望台駐車場と兼ねていて道路反対側に小さな表示があり、斜面の南東面に付けられている。小さな山であり、登山口さえ分かればもう安心だ。雑木林の中に導かれると直ぐに大きな檜の参道のような登山道になる。

 海辺の山だからか、何処となく雰囲気が異なるが理由は分からない。ナラ、カエデの類が多く、所々に松、檜が目立つ樹相の中の緩やかな道を、ゆっくりを心がけながら登っていく。登山道の所々で倒木があり行く手を阻まれるが、これは今年10月三陸沖を通過した台風18号によるものなのだろうか、大きな木も根こそぎ倒れている。


三国神社
 前方が開けて電波塔の建つ一角に出ると、その建物の脇に小さな台地があり、そこに一等三角点(点名:三国山、標高:440.25m)が設置されてあった。そしてその脇に小さく「大六天山」と書かれたお情けのような標識が功徳な人の手によって設置されていた。早速いつもの儀式として軽く三角点の頭にタッチし、山の無事や旅の安全などいつもの盛り沢山の願掛けをする。三角点の傍には車道が反対方向から通じていたが、気になると言うより空間が開かれて開放的な雰囲気だ。ただ期待の展望は一等三角点だと言うのに四周の樹木に邪魔されて何も見えず、とりあえず三角点と共にセルフで記念撮影を行う。

 そのあと、薄暗い檜の植林地の中の参詣道に入り、三国神社を目指す。ほんの数分で目指す三国神社が双耳峰の南側の高みに朱色に彩られて建てられていた。その隣には寄進された立派な釣鐘が吊り下げられていて、祠でいつものお願い事を済ませた後、慎重に一突きさせてもらった。「ゴーーーン」と少し低めの柔らかい音が暫く山中に響きわたって厳かな気分に浸れた。


三国神社から望む女川湾
 展望はこちらのほうが圧倒的に良くて、立ち枯れた檜林の向こうに女川湾が一望できた。社の脇に大六天山の説明書きが掲示されていて、それによると『大六天山:標高440.3米、牡鹿半島第二の高峰で、大六天の名は仏教で言う「六界欲天」の中の第六「他化自在天」から由来すると伝えられ、山頂から仙台、南部、相馬の三国が見えることから別名「三国山」とも言われている。世界三大漁場の一つである金華山沖に出漁する沿岸漁民の航海の目印でもあり、峰にかかる霧などから海洋気象を予知できる山として漁民から敬われている』とある。ちなみに牡鹿半島で一番高い山は標高444.83mの光山で、二等三角点が設置されている。もっと言えば金華山は更に高く、標高445.22mで二等三角点が設置。

 また説明書きにある六界欲天とは他化自在天 化楽天 兜率天 焔摩天 ?利天 四天王天のことで、他化自在天(たけじざいてん)は、欲界(地獄より天上まで)の最高位、また天上界の第六天、欲界の天主大魔王である波旬(はじゅん)の住処。この天は、他人の変現する楽事をかけて自由に己が快楽とするからこの名がある。この天の男女は互いに相視るのみにて淫事を満足し得、子を欲する時はその欲念に随って膝の上に化現するという。天人の身長は三里、寿命は16千歳という。ただし、その一尽夜は人間の1600年に相当するという。(出典:ウィキペディアによる)

コースタイム:大東町摺沢540==(登米IC,石巻河南IC@無料、約100Km)==730大六天山駐車場740---808大六天山(440.25m)817---821三国神社826---845大六天山駐車場850==(約33Km)==硯上山へ

青麻(あおそ)山 (標高799.49m、宮城県刈田郡蔵王町)

 21.11.13 山行者・文:沖

 体調を崩して急遽家内に岩手に来てもらうよう要請したが、暫く唸っただけで体調も一気に回復の様相となり、折角だから温泉保養と決めて気になっていた山も体調次第で登るような計画を立てた。温泉はまだ紅葉の残りが見られるかもしれない宮城県白石市の小原温泉、山は病み上りでも簡単に登れる白石市周辺の山を探して青麻(あおそ)山に狙いを定める。


登山口となるアンテナ群
 この青麻山は福島県から宮城県に入って最初に目にする双耳峰の山で、新幹線の車窓から、また高速道路から目立つ存在であり早く登ってしまいたいと思っていた。しかし途中下車までしてわざわざ登るような山でもなく、ずっと後回しになっていたのが実情だ。

 高速道路1,000円が染み付いてしまったが、この日はまだ金曜日でその恩恵に浴しないため、出来るだけ安価に通勤割引範囲内で走行すべく国道4号を併用した。ところが出発がやや遅れたことや途中通勤渋滞などで9時前の入口通過が怪しくなったため築舘ICまで届かずに高速道路に入ってしまった。


登山口から青麻山を見る
 白石ICから無線中継所入口の林道までナビ任せ、そこから狭いが舗装された林道を2.0Km走行すると一番奥のアンテナ塔の脇に青麻山への登山道がある。そこに既に一台のRV車が駐車してあったので、残されたスペースに自分の車を停めて山の準備をする。天候は小雨、ガスが掛かって山は全く見えないが、防寒をかねて合羽を羽織り、スパッツ代わりに長靴で準備完了。

 山頂に向かって登山道の左側は杉の植林地、右側はナラの雑木林が続き傾斜もそんなにきつくは無い。あと10年もすれば杉が延びて登山道の印象は相当変わるだろうと思いながら、右手に所々に残るもみじを愛でながらゆっくり登っていく。何しろこの2日間は満足な食事はしていないし、前日からは何も食べてない状況での山登りでありピッチは一向に上がらない。


大岩
 急斜面を巻くようになると程なく大岩に至る。ここで方向転換するように尾根筋に沿って登るようになるが、ここから山頂までナラの樹林が美しい。山頂まで約15分、至福の時間が経過する。青麻山の山頂は樹林に囲まれているが、小広い平らな頂に三等三角点(点名:青麻、標高:799.49m)が設置当時のままの綺麗な状態で鎮座し、その横に囲いに囲まれて小さな祠が祀られてあった。山頂までの所要は丁度一時間だった。

 誰も居ない山頂でいつものように三角点に軽くタッチし、祠の前で両手を合わして盛り沢山のお願い事を行なう。小雨模様だった天候も山頂に居る頃からいつの間にか止んできたようだ。ただガスが晴れず、双耳峰の「あけら山」には行かず、往路をそのまま戻ることにする。


ガスに包まれた山頂
 山頂ではゆっくり腰を下ろす事もせず、持参した梨を食べて水分補給と糖分補給を行い、カメラ目線でしっとり濡れた紅葉を眺めながら滑りやすくなった急傾斜を慎重に下る。それでも悔しいかな、一度だけドスンと尻餅をついてしまった。

 下山していると時間と共に山頂部までガスが消えていき、登山口に到着したらすっかり青麻山が姿を見せてくれた。ベールを脱いだ青麻山は山肌を真っ茶色に染め上げ、小雨に濡れてしっとりと落ち着いて優しそうだった。

 その後、白石蔵王駅で家内と合流し、「JR大人の休日」のコマーシャルで吉永小百合の食する白石温麺の店を横目に見て、小原温泉へと向かう。

コースタイム:大東町摺沢730==(若林金成IC,白石IC@1550円)==1025青麻山電波中継所1040---1125大岩---1140青麻山山頂(標高:799.49m)1150---1200大岩---1235青麻山無線中継所1255===白石蔵王駅へ   (走行距離:約155Km@往路)


泉ヶ岳 (標高:1175m、宮城県仙台市泉区福岡) 

 H21.10.17 山行・記者:沖

 紅葉の見頃もかなり標高が下がってきたこと、今年は例年よりも一週間程度早回りしていることなどから高い山より低山、しかもそれなりに楽しめる山を登ろうと思案した結果、未知なる泉ヶ岳へ出かけることにした。


駐車場
 泉ヶ岳は仙台市泉区にあってスキー場もあり「仙台市民の憩いの山」とか「仙台の高尾山」などと称されており、大勢のハイカーが訪れ登山ルートも幾つかあって初めて登るにはどのコースが良かろうかと色々とネットで調べてみる。リフトの運行についても調べてみたが、9時から16時半まで毎日運行し片道400円(往復700円)とのことだ。標高差210mも稼げるとあっては利用しない手はない。また表コースは古くは修験道の道で変化に富んでいるが一般向きではないとの記述、水神コースが一般的に良く踏まれているとも書かれている。これらを加味してリフトで兎平まで運んでもらって、そこからかもしかコースで泉ヶ岳山頂を目指し、泉ヶ岳から北泉ヶ岳へ足を延ばしてヒザ川に沿って下る周回コースと決めた。その結果、泉ヶ岳駐車場へはリフトの動く9時前に到着するようにして、少し時間的に余裕のある起床が確保できた。


岡沼と泉ヶ岳
 1000台収容できると言う大駐車場の一角に遠慮がちに駐車して、山の仕度をしてリフト乗り場へ向かう。駐車場で着替えをしながらハイキング客の行動を見ていると、100%が水神コースの少年自然の家の方向に向かっていく。リフト乗り場と逆方向にばかり流れていくのに不安を感じながら、一人リフトの乗り場へ向かう。不安は的中し、もう直ぐ9時だと言うのにお客は誰も居ない。スタッフの人にリフトが動くことを確認し、自動券売機のシーケンサのデータ修正を待って一番乗りで切符を購入。後に続く人はやっと一人。リフトが動くと同時に乗車し、紅葉が進む山肌をながめつつ、楽チン登山の開始だ。

 リフト上駅で下車してそのまま岡沼を目指してススキの原を進んでいく。小さな尾根を越えて下ったところが岡沼だ。普段は水が涸れている事が多いと書かれていたが、この日は涸れるどころか溢れていて登山道も冠水していて通れない。正面に目指す泉ヶ岳が優しい姿ででんと座って裾野を広げている。左に踏み跡を辿っていくと、靴を濡らすことなく無事に登山道に出て、再び山頂を目指す。


泉ヶ岳山頂広場
 かもしかルートを山頂を目指して登っていると、ナラ、ブナが綺麗でまさしく紅葉の山登りと言った風情だ。しかも仙台の高尾山ではさぞにぎやか登山と予想していたのに、静かな山登りとなって拍子抜けの感がする。単調だが比較的傾斜が急で油断するとバテてしまいそうなほどだ。周囲の紅葉を楽しみながら暖かい陽射しの木漏れ日を受けて、上着もシャツ一枚だけになってゆっくりゆっくり登っていく。

 表ルートの岩場の急斜面の登りとはどんなのだろうと思いながら、一歩一歩山頂に近づいていく。標高が増すほどに頭上の紅葉が一段と艶やかになって赤色、黄色が青空に映えてくる。人声が聞こえてきたら滑降ルートの合流地点のかもしか平だった。ちっとも平らなところが無いぞと思いながら、そのまま登っていくと割りと簡単に泉ヶ岳山頂に飛び出した。


泉ヶ岳山頂にて
 山頂は広くて石ころだらけだが、まず目に付いた祠を目指す。山頂には10人ほどがバラバラに適度の間隔をおいて、お互いを侵略しないような距離を保って憩っていた。そんな休憩中の人達の目線を感じながら主な建造物を順次眺める。祠の横にある標柱は泉ヶ岳山頂を表していたが、かすれて判読困難な状態で建てられていた。4箇所の登山ルートを確認して、三角点の所在を探すがこの山頂広場には見つからない。北泉ヶ岳ルートに入って直ぐに小さな広場があり、そこに待望の二等三角点(点名:泉ヶ岳、標高:1172.05m)が設置されていた。国土地理院のHPによると泉ヶ岳の二等三角点は「現況 傾斜」とあったが、現在は修復されているようで、比較的新しい三角点標石が埋設されてあった。ただこの三角点は最高地点に位置しておらず、泉ヶ岳の一番高い地点はこの先のもう少し奥まったところにあり、そこは1175mとのことである。


紅葉のブナ森
 小腹を満たすためにコンビニお握りを三角点標石を見ながら食べて、少し休憩を入れて体力回復を図る。休憩後は北泉ヶ岳を目指して平坦な山頂尾根を北西に進む。するとちょっと歩いたところで登山道脇に展望盤があり、表示はなかったがその地点が多分泉ヶ岳最高地点(標高1175m)だろうと思われる。さらに進むと少しずつ下っていくようになるが視界がよくなり、随所で紅葉の北泉ヶ岳が左奥に船形山を伴って早くおいでと言わんばかりに正面に聳えている。


千手観音ブナ
 紅葉はどこを見ても綺麗だが、面白山から大東岳にかけての山並みは霞んでほとんど見えない。カメラには写しこめないだろうけれど、デジカメだから気にせず何度もシャッターを切る。北泉ヶ岳の登りに差し掛かるとブナの樹が大きく、また栃の巨木も何本もあって感動する。素晴らしい眺めだ。やっぱり巨木が多いとそれだけでオーラが感じられて、山の印象ががらりと変わってしまう。しかも葉っぱが黄色、橙色、茶色に微妙な色彩の変化が美しく、それに陽が射すと一層あでやかな色彩を放つ。

 四周の景色に感動しながらだったので比較的簡単に山頂に到着した。北泉ヶ岳山頂には二人の先客がいたが、まず三等三角点(点名:浦泉、標高:1253.11m)にタッチし、近くにいた人にお願いして記念の写真を撮ってもらった。残念ながら山頂からの視界がごく限られていて北側に少しだけ木立が透けていて、そこから僅かに桑沼が覗き込める程度で山頂も広くはない。


泉ヶ岳山頂付近よりのパノラマ
 大東岳(左奥・霞んでいる)〜北泉ヶ岳(右ピーク)
 山頂奥に千手観音のような姿をしたブナがあったので、その姿形が面白くてカメラに収めた。山頂で昼食、そして少しゆっくり休憩してから再び紅葉の森へ下っていく。下りに見るとまた違った視点で見るため、美しい森を改めて納得しながら一歩一歩ゆっくり降りていく。

 三叉路で往路と別れて水神コースを採るように下り、大勢が休憩している水神に下る。水神でヒザ川を石伝いに渡り、そこから少年自然の家までは広くてよく踏まれた登山道を緩やかに下っていく。整理体操をするような気分で、ゆっくりフィナーレに近づいていく。山登りを終えて駐車場に戻って泉ヶ岳山頂を見上げると、沢山のパラグライダーが上空に舞っていた。

コースタイム:大東町摺沢
645==(一関IC,PA1000円)==840泉ヶ岳スキー場駐車場855---900リフト下駅(標高550m)903--(約10分@400円)--913リフト上駅(標高760m)---925岡沼---1017かもしか平(かもしか・滑降ルート合流地点)---1026泉ヶ岳山頂(標高:1172.05m)1041---1110三叉路---1135北泉ヶ岳(標高:1253.11m、昼食)1208---1231三叉路---13:08水神---1317水神平---1350泉ヶ岳スキー場駐車場1400==(大和IC,一関IC900円)==1700大東町摺沢  (走行距離e往路:約120Km,復路:約115Km