南木曽岳  (1676.93m:長野県木曽郡南木曽町)

H20.8.9


 帰省ついでに今まで何度か中仙道の旧宿場町を歩いてきたが、今回は妻籠宿の基点になる南木曾町のシンボルの山、南木曾岳に家内と登ることにした。下山後はそのまま妻籠に泊まって古の旅籠風景を楽しむことにする。南木曾岳は御嶽山、駒ケ岳と併せて木曽三山の一つとも言われている。


高野槙の樹林
 登山口となる蘭(あららぎ)キャンプ場は鬱蒼とした木曽ヒノキに覆われた薄暗い森の中にある。夏休みの時期でキャンパーが多く利用していて、比較的活況を呈していた。そのキャンプ場から少し奥まで車を走らせると目指す南木曾岳駐車場があり、そこが登山口となる。登山口にはトイレと案内板が設置されていたが、時期的なものなのかアブがやたら多くて車のドアを開けると一目散に車に入り込んでくる。やむなく一旦もと来た道を戻ってアブの居ないところで山の支度を整え、改めて駐車場を目指す。


梯子の道を登る
 歩き出しても暫くはアブに追いかけられるが、いつの間にか居なくなってホッとしながら山に登るモードに切り替わっていく。真夏の低山に登るため思い切り汗を搾られる覚悟で、水分だけは不足しないように確保して針葉樹の林の中を歩き出す。谷間の登山道に陽が射すのは遅く、ひんやりした空気が残されている。気温の上がらないうちに高度を少しでも稼ぎたいと、汗をかかない程度にピッチを上げる。


鎖場を閉鎖、新たな迂回路
 「喉の滝」を過ぎて高野槙の巨木が目立つようになると太陽を思い切り受けるようになり、汗も一気に噴出してくる。南木曾岳は木曽五木が育つ山で、登山道脇に咲く花を愛でながら登る山ではなく、森林浴と鬱蒼とした木曽の樹層を楽しみながら登る山である。特に高野槙は立派で高野山参道の高野槙の並木に匹敵するような巨樹が多く、急傾斜の斜面をあえぎながらも幹の太さ、樹高を仰ぎ見ながらゆっくり高度を稼いでいく。

 山肌には巨岩が多く露出していて、登山道は梯子や階段が多く取り付けられている。特段の危険箇所は無いが、よくもまあ丁寧に整備してくれていると感心するほど、ふんだんに木曽の木材を使用している。鎖場跡に新たに設置された立派な階段橋を登ると、視界も一気に開けてきて恵那山が「あららぎ温泉」のある集落の後方にデンと大きく横たわって見える。やはり深田百名山に選ばれていると納得させられるマッスがあり、存在感がある。


山頂にて
 山の展望を楽しんでいるうちに高度も稼いでいて、やがて「かぶと岩」の看板に至る。この辺まで登ると山はもう秋の気配で、オオカメノキの実が既に赤く染まっている。「かぶと岩」を遠くに見て山頂を目指す。もう傾斜も随分緩くなって山頂が近いことを感じさせられるが、ヒノキの巨木は山頂まで続いている。

 山頂は樹林の中にひっそりと置かれていた。山頂を示す標石、木製ベンチ、それに二等三角点(点名:南木曾、標高:1676.93m)があるだけで、展望も得られない。三角点にタッチし、記念写真を撮る。四周を見渡すと僅かに南側に少し開けた空間があり、その場所に行くと巨岩の上に出て恵那山が正面に展望できた。


南木曾山大神
 山頂を後に避難小屋方向へ一方通行の登山道を5分ほど行くと、「南木曾岳山大神」が大岩に祀られていてその左に脇道を入ると直ぐに巨岩で出来た「見晴」がある。巨岩の端から木曽御嶽と乗鞍岳のツーショットが正面に見える。偏向フィルターを効かせて写真を撮る。くっきりといかにも偏向が効いている様な真っ白い雲が小さなモニター画面で確認できる。山頂部にだけ見事に雲が懸かっているが、山の大きさが雲のあるなしで判断できるほどだ。


見晴らしより御嶽山(左)と乗鞍岳(右奥)
 ここで軽く休憩して軽食を済まし、避難小屋のある展望台へ向かう。赤い屋根の避難小屋には立ち寄らず、その脇を通過して真っ直ぐ展望台へ向かう。笹原の台地にある展望台には山座同定に便利な看板が2枚設置されていて、それと対比させながら山座同定を行う。一つは中央アルプスの展望図、もう一つは御嶽山から北アルプスにかけての展望図である。つまりそれだけの展望が得られると言うことなのだろうけれど、あいにく霞が強くて北アルプスまでの遠望は効かない。


中央アルプスの核心部を望む
 それでも展望台の正面に中央アルプスの山並みが一望でき、木曽駒ケ岳、熊沢岳、空木岳、南駒ケ岳、安平路山、擂古木岳などが容易に確認できた。北側に霞んで判然としないが高く聳えて見える山並みはどうも穂高方面の山のようだ。朝日村からの林道がまだ回復しない鉢盛山(2446m)も背が高く、辛うじて確認できる。この山もアルプス展望の山であり、復旧の情報を得たら登ってみたいものだ。避難小屋から展望台に向かう途中で三留野ルートと合流するが、この道は歩かれて無いようで少し入ってみたが藪になっていて足元も確認できない。


展望台より望む笹の原と避難小屋
 この展望台で心行くまで山の展望を楽しみ、沢山の山々を飽かず眺めた。30分が瞬く間に過ぎてしまった。下山は水場分岐から思わぬ登りに苦労させられたが、何とか登りきって「摩利支天」へ向かう分岐に入る。分岐から直ぐに「摩利支天」に到着、足元が切れ落ちた断崖上にある岩場によじ登ってみると、正面には谷を挟んだ向うに恵那山が何の遮るものも無くデンと横たわっている。左手方向には南アルプス南部の山並みが見えているようにも感じるが霞が強すぎる。この絶景の岩場は高度感抜群で長く立って居られない。早々にカメラをしまって岩場を下りる。


摩利支天の岩場より望む恵那山
 下山はまた鎖、梯子、階段の中を黙々と標高を下げていく。家内は何度も逆向きに登りと同じ姿勢で下りていく。高野槙の樹林帯も通過し、登りとの分岐にやっと到着。ここまで下ると登山口はもう直ぐだ。真夏の太陽に思い切り陽を浴びて、車は灼熱地獄に化していた。ドアを全開し少なくなったアブに気を揉みながら最低限の着替えをして急いで下山する。


妻籠宿の佇まいと妻
 そして直ぐ近くの眼下に見えた「あららぎ温泉」で山の汗を流し、妻籠の宿に早めの宿泊手続きを済ます。通された中仙道沿いの部屋で、格子戸を空けて縁側に腰掛けて飲むビールは中々乙なものであった。またビールのあとの昼寝も心地よかった。  沖 記

コースタイム:西那須野21:30==(約370Km、仮眠休憩)==6:00蘭キャンプ場登山口6:25---6:50登山口(林道分れ)---7:15分岐点(下山道合流点)7:20---7:30喉の滝---8:13クサリ場跡8:15---8:53かぶと岩---9:07南木曽岳山頂(点名:南木曾、標高:1676.93m)9:15---9:20見晴(軽食)9:35---9:42避難小屋(展望台)10:10---10:20水場分岐---10:30摩利支天往復10:40---12:08分岐点---12:40蘭キャンプ場登山口12:45===13:00あららぎ温泉(500円)15:00===妻籠宿(泊)