博士山 (福島県大沼郡昭和村:1481.99m)

2007(H19).5.20



シャクナゲ同門の急登
 博士山は絶滅が危惧されているイヌワシの生息地として知られ、ミズナラ、ブナ、クロベの大木が数多くあり、急峻な谷に囲まれた自然豊かなところで、会津地方の柳津町、昭和村、会津高田町の境界に位置している。第42回目の博士山山開きが会津地方・柳津町主催で20日に行なわれ、久しぶりに家内と二人で参加した。


ブナ林のオオカメノキ
 前夜は柳津町にある町民センターに泊まり、時間に余裕のない中を急ぎ準備して登山口の大成沢に向かったが現地到着が遅れて会場に着いたときは式典が始まっていた。混雑した会場内で駐車場探しや山の支度をしている間に式典は終わり、参加者が登山開始しだしたところに受付を行い、記念バッジやヤクルトなどをもらって皆より少し遅れて登山口の道海泣き尾根ルートに向かった。

 当日は小雨模様だったが回復基調にあり、念のため合羽を着て登山開始する。10分ほどで最後の水場になり、そこを右手に尾根に取り付くと、いよいよ本格的登山となり急峻な名前通りの泣き尾根になる。頭上は見事なブナの新緑で覆われていて、水滴が瑞々しさを助長して「目に染み入る」という表現がぴったりする状況だ。また樹齢数百年と言う巨木があちこちに見られて、いかにもイヌワシの棲んでいる山という印象だ。

 尾根の要所要所に土砂崩れを防止しているようなヒノキに似たクロベの巨木があり、手ごろな休憩スペースを提供している。余所見をするとコブシやオオカメノキの白い花やヤマツツジの赤い花が新緑に映えて美しいが、目の前に迫る濡れた足場は滑りやすく注意を要する。鎖、ロープ、木の根っこに掴まりながらまりながら標高を稼いでいくと、いつしか谷も絶壁になって残雪混じりの急峻な壁が稜線に突き上げている。難所のシャクナゲ洞門を過ぎると、程なくして稜線に出る。その分岐にも立派なクロベが育っている。ここで一本立てて呼吸を整えるが、どうやら雨は回復したようだが寒気が入って風が強まり合羽は手放せない。


ツバメオモト

山頂の沖夫妻

稜線のクロベ
 合流点から社峰に至る稜線の右側は傾斜もゆるく樹林帯で安全だが、左側は小潅木の根っこが透けてスパッと切れ落ちており、思わず足が竦んでしまうようなところが多く緊張が続く。右側の樹林の林床にはツバメオモトが清楚な白い花を咲かせている。他にショウジョウバカマや花の時期に少し早いがマイヅルソウがつぼみを少し膨らませている。尾根の所々にクロベの巨樹がこの山を引き締めている。

 社峰を超えると目指す山頂が見えて、もう一頑張りで山頂に至る。今年は随分融雪がすすみ雪渓上を歩けるような残雪はほとんど消えて、ぬかるんだ登山道を足元を拾いながら登って山頂を目指すことになる。泥んこになってやっと一等三角点の設置された1482.0mの博士山山頂に到着。所要時間は約2.5時間で、ほぼ標準の時間で登ったことになる。山頂到着の恒例行事である三角点タッチはお神酒を避けて横を撫でるようにして実施した。

 山頂には主催者が寒さに震えて長時間待っていてくれており、三角点においてあったお神酒を戴き柳津町広報に掲載される記念写真に納まる。私たちは最遠来者ということで[シャクナゲ賞」という楯を戴いたことによる。


残雪の山肌
 山頂からの展望は残念ながらガスで何も見えず、寒さも厳しい状況であり、昼食をゆっくり食べるより早く下山して暖たまるほうを選択して早々に下山開始する。いつもならこの時期は山頂一帯が雪に覆われて三角点は雪下に隠されているが、今年は山頂全体に雪が少なく大半の地面が露出していた。

 下山時は道海泣き尾根ルートとの分岐まで往路を戻り、分岐点から尾根通しに近洞寺ルートを経て下山した。標高が減じるほどにクロベの巨樹がブナやミズナラの巨樹に代わっていくが、いずれの樹木もオーラがみなぎっているような巨樹ばかりで見事であった。  沖 記

コースタイム:道海泣尾根登山口9:00---10:15シャクナゲ洞門---10:35分岐10:40---11:15社峰---11:35博士山山頂(1482.0m:昼食)11:50---12:05社峰---12:30分岐12:35---13:00大谷滝尾根分岐---14:10林道---14:25道海泣尾根登山口