大東岳 (1365.55m:宮城県仙台市大白区秋保町馬場岳山)


(2009)H21.9.27


登山口駐車場

 山形県の甑岳に登った折、船形山かと見紛う様な台形型の大きな山が大東岳だと知り、いつかは登ろうと機会を窺っていた。一週間前の葉山(村山)に登った折も、大東岳が船形山と肩を並べるように立派に見えて、早くおいでと誘われているようだ。そのチャンスは直ぐにやってきた。連休直後の週末、天気予報は東北地方は好天に恵まれるはずだったが、朝から曇り空で奥羽山脈にはずっと雲が張り付いていた。東北道を南下して西側にある栗駒山や船形山をチェックするが、背の高い山はどこも見えず天候回復に期待しながら目的地に向かう。


7合目先のブナ林

 ナビに導かれて仙台宮城ICで高速を降り、R48、R457を繋いで二口温泉に到着。温泉入り口にあるビジターセンターの先に大東岳登山口と小さな駐車スペースがある。センターが開館していればトイレを借りようと思っていたが丁度職員の出勤時間と同じだったため、駐車場のゲートを開けるところから待つようでは先が長いと諦める。

 小さい林の中の駐車場は既に満車状態で、少し先にある道幅が広くなった路肩に先行車に習って縦列駐車する。小雨がぱらつきそうな不安定な天候の下、山の仕度をしていつもより多めに水分をザックに入れて出発する。大東岳は標高1366mの山ではあるが、標高差は1000mあり、表ルートで全長5.3Km(往復10.6Km)、裏ルート経由だと8.4Km(一周13.7Km)あり相当きついとのこと。脚力が衰えた今の自分の足で表コースで登り約3〜3.5時間、下り2〜2.5時間と想定し、安全のため表コース往復で計画。


鼻こすり

 長丁場覚悟で緊張しながら出発したが、行けども行けども沢から離れず、杉・檜の植林された薄暗い登山道に話し相手の居ない単独行では段々と気持ちが滅入ってくる。合目標識が一合目から順に均等に配置されていて、大凡15〜20分で一合を通過する勘定だ。

 二合目と三合目の間にある立石沢は薄暗い空間に少し開けた広場になっていて、そこだけは明るく感じられて腰を下ろすには丁度良い。そこで休憩して持参した梨を食べる。甘くて水分たっぷりで、山で食する果物では最高の部類だ。

 立石沢を過ぎると傾斜は急になり登山道らしくなってくるので、やはり慎重にゆっくりペースで登って行く。標高700mを過ぎる辺りから人工林の杉・檜の樹層から一気にブナ林に変わってきた。ドラスティックなほどの変化を見せると直ぐに四合目の標識が、これまたいかにも均等配分したような場所に設置されている。この先で空腹を満たすべくお握りを食べながら、稜線を目指して標高を稼いでいく。


ナハリダケとツキヨダケが
共存していたブナ

 五合目は谷からトラバース気味に登りきった尾根に出た地点にあり、ここだけはいかにも五合目と言える場所に設置されている。この場所から船形山が見えるようで標識に船形山展望所とあったが、今日はガスっていて樹林の先は白く閉ざされている。

 五合目からは尾根ルートとなり気持ちの良いブナ林を登ると、まもなく「鹿打林道分岐点、穴戸沢林道を経て野尻に至る」と言う標識の分岐点だ。この枝道は刈り払いされていて利用者がいるようだ。ただ標識の下の方に小さな看板があって、そこには熊の絵と「クマがいます」と描かれていてズシッと重みのある緊張感をにじませている。

 六合目を過ぎ、標高1019m地点に、その旨の表示があり直ぐ近くに小さな標高点を示すと思われる標石が建てられている。ここから少し水平に歩くことになるので、一旦休憩を挟むことにし飴玉で糖分を補給。


山頂直下の潅木の緩斜面

 八合目はブナ林の少し開けた泥んこ道が広がったようなところにあり、ここから先は山頂に向かって胸突き八丁の急坂が待っている。地図上で等高線が密度濃く書き記されており、踏ん張りどころを前に再度体調を整える。

 少し休憩をして改めて意識的にゆっくりと登っていく。ブナ林が美しい。少し傾斜が緩んだところに左に水場の分岐、水場まで100mとのことだがここはパス。そのまま我慢して登っていくと登山道にロープが2箇所に設置されている。今までの登りで一番急なところだ。登りきったところに「鼻こすり、山頂まで0.6Km頑張ってね」と書かれた標識、これに気合を入れられて登っていくと九合目。しかしここから意外と頂上まで遠く感じた。とくに緩傾斜になって潅木の中を歩くようになってから、早く到着したいと言う思いが強くて余計に長く感じた。しかも潅木の背が高く藪が密なため、トンネルの中を歩くようで、視界が開けたときは本当にほっとした。

 視界が開けるとそこはもう大東岳山頂だった。小さい広場になった山頂には10人ほどが昼食休憩していた。山頂の一等三角点(点名:大東山[おおあづまやま]、標高:1365.55m)にまずタッチし、いつもの儀式として山の無事、家内安全、商売繁盛などを祈願。それから山頂にある四角い展望盤、山頂標識、山形県紅葉川への方向標識、樋ノ沢避難小屋への方向標識などを確認する。しかし期待した展望はガスに閉ざされて何も見えず、紅葉した山頂部もほとんど見ることが出来なかった。


大東岳山頂

 山頂の隅っこに座る場所を確保して昼食をしながらガスの晴れるのを待つが、時々青空が覗けるものの遠望はまったく叶わなかった。でも気になっていた山に登っただけで大満足、大きな一等三角点を眺めながらの昼食は心地よかった。

 山頂に繋がるルートのうち山形県に向かうルートは利用者が少ないのか刈払いも行われていないようで、藪っぽくなっていた。樋ノ沢ルートは利用者が多いようでしっかり刈払われていたが、今回は入り口を眺めるだけでおしまいにした。両方の入口の中間の潅木の中に小さな祠が奉られていたので、そこでも両手を併せていつもの祈願をした。

 ガスに閉ざされた山頂で長居をするより早く降りて温泉のほうがよかろうと、先行者たちより早く下山に取り掛かる。下山途中で登りに気づかなかったブナハリダケを登山道脇に見つけて、少しだけ戴いてきた。また登り時はパスした水場を確認してきたが、緊急時の水分補給と考えたほうが無難な水場だった。季節によっては枯れる時もありそうな気がする。

 天候も辛うじて曇りで耐えてくれたが、車に戻ると小雨模様になってきた。直ぐ近くの二口温泉で入浴して山の汗を流し、着替えをしてさっぱり気分で霧雨の中を帰路に就く。

 今回歩いた表コースはずっと樹林の中で視界はなく、裏コースの渓谷美を楽しみながら周回するのがやはり大東岳の真髄だと思う。 沖 記

コースタイム:摺沢600==(145Km)==815二口温泉登山口830---920立石沢930---1010五合目---1030標高1019m地点1035---1100八合目1105---1133大東岳(1365.55m:昼食)1205---1255標高1019m地点---1308五合目---1333立石沢---1405二口温泉登山口1415===1420ばんじ山荘(入浴@600円)1455==(約145Km==1710摺沢